レビュー
家電、寝具、インテリア、園芸用品、コメ、そしてマスク。これらはすべてアイリスオーヤマの製品だ。
かつて同社はプラスチック製品の下請け加工メーカーだったが、ブロー成型の技術を活かして、自社ブランドの養殖用のブイや田植え用の育苗箱などを世に出した。その後、園芸業界にプラスチック製品を投入したとき、ホームセンターをメインの販売チャネルとしたところから、「メーカーベンダー」という独自の仕組みづくりへと歩み始める。その足跡を辿ると、アイリスオーヤマの一貫した思想が見えてくる。
メーカーでありながら問屋でもある。2万5000という膨大な製品点数がありながら、内製化にこだわる。工場の稼働率を7割以下にとどめる。いずれも一見非合理だから、他の会社は真似をしようとしない。そんなアイリスオーヤマはいまや、ネット通販を成功させ、北海道から佐賀県まで物流拠点を持ち、積極的に海外展開するほど飛躍を遂げている。経営学者の楠木建氏は「ほぼ完璧なストーリーとしての競争戦略」と本書序文で絶賛する。
アイリスオーヤマの仕組みは、長年、同社を率いてきた著者の大山健太郎氏がつくり上げた同社固有のものだが、その思想や戦略には、他の企業でも実践できる普遍的な学びがある。
本書の要点
・アイリスオーヤマは「ピンチが必ずチャンスになる経営」をしている。その結果、コロナショックや東日本大震災など、時代環境が危機にあるときに必ず業績を飛躍的に伸ばしている。
・重視するのは、使う人の立場に立つ「ユーザーイン」の発想である。「買う人=使う人」とは限らず、使う人の立場に立てれば、新しい市場を創造できる。
・問屋機能を持つ製造業「メーカーベンダー」という業態を確立したことで、ユーザーインがさらに強固になった。
・稼働率7割以下にとどめるルールを徹底。その結果、急な需要の高まりにすぐさま対応できる「瞬発対応力」を維持している。
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