レビュー

日本企業はかつて、数多のイノベーションを起こし、世界中の社会のあり方に大きな影響を与えてきた。しかし、この数十年の間にイノベーションを生み出す力を失い、停滞している。


イノベーションの力を取り戻すためにはどうすれば良いのだろうか。その問題について考察し、新たな一歩を踏み出すうえで重要なパラダイムを余すことなく紹介したのが本書だ。
テスラやグーグル、アップルのように、21世紀に存在感を高めた企業には共通する特徴があるという。それが、本書が提示する、社会運動・社会批判としての「クリティカル・ビジネス・パラダイム」だ。顧客の要望に応えるのではなく、それを批判的に受け止めて、自らが思い描く社会のあるべき姿へと啓蒙する。また、自然環境保護をミッションに掲げるパタゴニアのように、ビジネス自体が社会運動としての性質を帯びることで、共感したステークホルダーの支持を集めていく。現代は、直接的な社会運動や政治活動よりも、企業活動の影響力のほうがはるかに大きい。社会を変えるためにはクリティカルな理念を掲げたビジネスを行うほうが効果的なのだ。
従来のビジネスの常識から大きく逸脱するパラダイムへと転換するためには、まずは自分自身の考え方を批判的に捉えていく必要がある。本書を通して、これまで当たり前と思っていた価値観に「クリティカル」な視点を持てるようになり、新たな扉が開かれることだろう。

本書の要点

・クリティカル・ビジネス・パラダイムは、批判的な観点から社会における問題を新たに生成し、社会運動・社会批判としてのビジネスを通して社会のあるべき姿の実現を目指すものだ。このパラダイムの勃興によって、経済・社会・環境のトリレンマを解決する。


・従来のビジネスでは、競争優位性と持続可能性を保てない。顧客の欲求に応えるのではなく、顧客を批判・啓蒙の対象として捉え、価値観をアップデートすることが重要となる。



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