レビュー

疲労とウイルスにどのような関連が? 多くの人はこう疑問を持つのではないだろうか。
普段意識することはまずないが、私たちの体には無数のウイルスが常時潜伏している。

こうしたウイルスは常に体の内側から私たちを観察しているのだ。
著者は人間の体に存在するヘルペスウイルスの専門家で、著者の所属するチームはうつ病にかかりやすいウイルス遺伝子変異を発見したことでも知られている。ウイルスとうつ病を直感的に結び付ける人は少ないだろうが、本書を一読すればウイルスからうつ病を解明する行為に合理性を感じていただけるはずだ。本書のサブタイトルになっている「すべてはウイルスが知っていた」というのは決して誇張ではないのである。
本書は、ウイルスの視点を通して、疲労、うつ病、そしてコロナ後遺症を科学的に理解しようと試みる。疲労は私たちの社会でも大きな関心を持たれている。会社のあまりにも過酷な業務によって心と体をすり減らし、自ら命を絶つという事例も珍しくなくなった。一方で、疲労に対する正しい理解が社会に浸透しているとは言いがたい。そこにはまだ誤解が生じているのが実情だ。
科学的な視点は客観性という点で非常に優れている。普通の人が陥りがちな主観的な感想やバイアスを徹底的に排除するからだ。現代社会に生きる者として、ウイルスになったつもりで疲労を科学的に理解するのも一興ではないだろうか。

本書の要点

・日本の疲労研究は欧米に先んじている。うつ病や新型コロナウイルスの後遺症など、疲労を調べることでいろんな病気のことがわかるようになる。
・疲労には「疲労」と「疲労感」の二つの意味があり、これを区別することが大切だ。また、疲労にも「生理的疲労」と「病的疲労」がある。
・しかし疲労を数値化するのは難しい。体に潜伏しているヘルペスウイルスに「教えてもらう」ことで、疲労を数値化できるようになり、さらにウイルスに注目することでうつ病の原因究明も大きく前進した。



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