レビュー
「失われた30年」――そういわれて久しいが、そのような中でも、進化し続けている日本企業が存在する。それらの企業の「進化の法則」を解き明かすことが本書の狙いだ。
著者の名和高司氏は、マッキンゼーにて複数支社のヘッドを歴任し、一橋大学など複数の大学のビジネススクールで教鞭を取りながら、ファストリテイリング、味の素などの社外取締役を務めてきた人物である。アカデミックと実務の両面の知見をもとに、『パーパス経営』など数多くのベストセラーを世に出してきた。
著者は、「企業の寿命30年」といわれる中で、日本には100年超えの長寿企業が多く存在することに着目した。中でもPBR2倍超えとなる企業トップ50には共通する進化パターンがある。「勝ち続ける企業」の5つの型を、具体的な企業の事例とともに解き明かしていく。たとえば、島津製作所、ユニ・チャーム、味の素、ロート製薬、ニデック、ポーラなど、その進化の背景を探究するプロセス自体が大いに知的好奇心をかきたてられる。
経営者のみならず、あらゆる職種のビジネスパーソンや、これから社会に出る学生の方々に、ぜひ本書をおすすめしたい。自分たちの事業に活かせるヒントを学べるとともに、心に火がつけられることだろう。
本書の要点
・日本企業が次世代成長を遂げるためには、成長企業から進化の法則を学ぶ必要がある。「頭足(オクト)」型、「軸旋回(ピボット)」型、「異結合(クロス)」型、「脱構築(デコン)」型、「深耕(カルト)」型の5つがある。
・企業の進化の5類型には、ズームアウトして遠い未来を描き、ズームインして現実と向き合うという「遠近複眼思考」や、「資産モデル」を組み替えて革新する発想といった共通する特徴がある。
・伝統と革新は両義的な概念であり、伝統のなかにこそ革新の芽が潜んでいる。
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