レビュー

法務は会社の売上に直結しない部署であることから、多くの企業にとってはリソースを割きづらい分野である。だから、社内に法務担当者がひとりしかいない、「ひとり法務」と呼ばれる人は意外に多いものだ。

もしそれまで法務経験がなかったのに、「ひとり法務」を任されたら、何から手をつけるべきだろうか。社内に相談できる人も、他社の法務に知り合いもいないとしたら、日々の業務を不安な気持ちでこなさなければならないかもしれない。
著者は、企業の法務部門の責任者を務め、契約業務から渉外業務まで幅広い業務を担当しながら、「ひとり法務」として得た学びをSNSを通じて積極的に発信している「法務のいいださん」こと飯田裕子さんだ。本書は、「『ひとり法務』をはじめた頃の自分が、この情報があれば、もう少し“安心して”、『ひとり法務』をスタートできた」と思える本を目指したという。弁護士や研究者による専門書とは一味違う、企業の法務の仕事をよく理解した著者ならではの視点から“企業法務”を読み解くことができる一冊だ。現場での経験を踏まえ、それを他の人にも役立つかたちでアウトプットすることを常に考えている人の解説は、非常に貴重なものだ。
法務実務に関する本は数多くあれど、「ひとり法務」に特化した書籍はめずらしい。法務として採用された人や法務に異動になった人、法務部門を設置しようと検討している経営層、さらには法務部門への相談の仕方がわからないというビジネスパーソンにも本書はおすすめだ。

本書の要点

・法務になってまずすべきことは会社からの「期待値のすり合わせ」である。各部署にヒアリングし、それを「期待値」と「現在地」に整理した“一覧表”を作ろう。
・法律の知識があっても、リスクに気づくことができなければ法務の仕事は成り立たない。法務は法律に向き合う仕事であるが、法律を使って満足させたい「顧客」との信頼関係を築くことが重要だ。


・「リスクの評価」は専門家の力を借りることもできるが、「リスクの検知」は社内にいる法務の重要な業務である。まず身につけるべきは「問題を検知するための知識」である。



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