レビュー

自分はアーティストだ、という自覚を持っている人はあまりいないだろう。アートに興味を持っている、という程度であればその数は少し増えるかもしれないが、大多数とは言えなさそうだ。

特に日本のビジネスパーソンにとっては、アートとはあくまで仕事とは関係ない趣味の領域に属するものか、あるいは自分とまったく関係ない「よくわからないもの」という認識が主流かもしれない。教養という認識があればずいぶんいいほうだ。
しかし、アートが健康に良い影響を与え、しかもその効用が科学的に証明されつつあるとしたらどうだろうか?
グローバルなビジネスエリートにとって、アートに触れることは大きなトレンドになってきている。これまでのアート観はどちらかといえば教養として美を愛でるものだったが、たとえばジムに通ったりするのと同じように、自らを健康に保つために活用されつつあるのだ。
本書が定義するアートとは、緻密に書き込まれた絵画や、創造的な比喩を駆使した文学、あるいは人生を演奏に賭けた人たちによる荘厳なオーケストラだけではない。落書きやぬり絵、鼻歌のような身近なものでさえも、脳をはじめとした身体から周囲のコミュニティに至るまで、さまざまな影響を及ぼすことが論じられている。
これまであまりアートとかかわりがなかったという人は、これをきっかけにアートに触れ、今まさに見出されつつあるその新しい可能性を自らの心身で体験していただきたい。

本書の要点

・アートが健康や幸福に大きな影響を与えることが、科学的に明らかになりつつある。
・ここでいうアートにおいて、技術はあまり関係ない。落書きや鼻歌などでも効果がある。
・トラウマのような心の傷からの回復には、アートが大きな役割を果たす。
・アートは個人的な体験に留まらず、コミュニティ全体を健康にする力がある。

公衆衛生の立場から、アートの導入が推奨されるようにさえなっている。



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