レビュー

経営者の葛藤がこれほど詳らかに書かれた本は珍しい。本書は株式会社アイスタイルのCEOによる、起業から今に至るまでの奮闘の物語だ。


経営を語る際の切り口は無数にある。どんなサービスをつくり、収益を生み出すか。どのような組織をつくり、どのように社会に貢献するか。経営はこうした要素が絡み合う多面的なものだ。本書があぶり出す経営の姿とは、「サバイバル」だろう。経営を取り巻く環境は常に変化する。消費者の動向や各国の政治的状況といった要素は不確実性を伴い、企業に理不尽な現実を突きつけてくる。最近であれば新型コロナウイルスの流行がその好例だろう。人々の行動が規制され、多くの企業がダメージを受けた。
本書には、コロナで資金繰りが悪化し、倒産の危機に直面するシーンが登場する。こうした窮地において厳しい決断を繰り返すことで、アイスタイルは今まで生き延びてこられたのだ。著者は緊迫感にさらされながらも、こう述べている。
「嵐を避けることはできない。けれど、嵐の中で生き抜く術は必ずある。折れず、倒れず、立ち続けていれば、空は明るくなる」。
華々しい経営者のイメージとは異なり、激しい荒波のなかでサバイブしてきた著者の赤裸々な体験は、経営者や経営者を志す方の心に火をつけてくれる。たとえ経営に携わらない方であっても、目の前の壁を乗り越えようと勇気が湧くのではないだろうか。

本書の要点

・インターネット黎明期、著者はインターネットを活用したビジネスに可能性を見出し、アイスタイルを立ち上げた。こうして「@cosme」が誕生した。
・インターネットバブルがはじけると、アイスタイルはたちまち窮地に立たされる。絶体絶命のピンチを救ったのは、あるエンジェル投資家だった。
・コロナ禍での倒産の危機から抜け出すきっかけは、過去に何度か「やめろ」といわれたリアル店舗とネット通販の事業だった。



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