レビュー

1+1=2。この当たり前の足し算ができない大人がいる――。

本書は、そんな衝撃的な言葉からはじまる。
もちろん「1+1=2」というのは比喩であり、その心は「経済合理性」である。あなたの周りにいないだろうか。「宝くじでいつか大金を当てる」と大真面目に語る人や、「この株は1年後には10倍になるよ」と鼻息を荒くしている人。しかし残念ながら、そんな奇跡が起きる確率はほぼゼロだ。冷静に考えればわかるようなものだが、「1+1=100」を本気で信じている大人は思いのほか多い。詐欺師に騙されたり、カモにされてしまったりするのは、このような人であることは想像に難くない。
だからこそ、「1+1=2」という現実をちゃんと知っておくことが大事だと主張するのは、著者の橘玲氏である。世界を見渡すと、名だたるお金持ちはみな市場経済の覇者たちだ。市場におけるルールを遵守し、その中でいかに儲けるか。彼らはその忠実な実践者なのである。
本書は小中学生向けに、市場経済の仕組みをわかりやすく説いた一冊だ。
親子で遊べるゲームを通して、楽しく学べるようになっている。語り口はやさしいが、紹介する内容はトレードオフ、金利と複利、限界効用の逓減といった、経済学の必須項目ばかりである。もしあなたが経済に明るくないなら、入門書として利用するのもおすすめだ。
子どもへの金融教育が叫ばれるなか、「どう教えていいのかわからない」という親御さんもいるだろう。本書はそのテキストとしてうってつけだ。ぜひ親子で楽しみながらマネーリテラシーを身につけてほしい。

本書の要点

・「あちらを手に入れたら、こちらが手に入らない」ことを「トレードオフ」という。
・お金を増やしたいなら、「複利」の力を最大限に活かさなければならない。
・楽しさや幸せは時間とともに減っていく。これを「限界効用の逓減」という。
・時間には値段がついていて、待つことで「金利」というおまけがつく。
・「はたらいてお金を稼ぐパワー」である人的資本は、大きいほどたくさん稼ぐことができる。

また、複利の力で大きくすることもできる。



フライヤーでは、話題のビジネス・リベラルアーツの書籍を中心に毎日1冊、10分で読める要約を提供(年間365冊)しています。既に3,300タイトル以上の要約を公開中です。exciteニュースでは、「要約」の前の「レビュー」部分を掲載しています。

編集部おすすめ