レビュー
「人材ビジネス」と聞いて、すぐさま「自分ごとである」と捉えられる人はあまり多くないかもしれない。だが本書を手に取れば、人材ビジネスがこれまでの人生においてずっと身近な存在であったことに気づくはずだ。
本書の著者、水野臣介氏は、人材ビジネスのプロフェッショナルだ。1990年代に地元・名古屋の人材派遣会社でキャリアをスタートした水野氏は、「人員が集められなかったのだから、責任を取って自分が働いてくれ!」というクライアントからのクレームに対応し、30以上の職種を経験したそうだ。そしてその働きぶりが評判となり、東京の出版社が運営する派遣求人のポータルサイトのリーダーに転じた。現在では、人材業界専門誌の発行人として、人材ビジネスを見つめ続けている。
本書はそんな水野氏が、人材業界の今とこれからを語りつくした一冊だ。人材ビジネスは私たちのライフステージに伴走するものだとして、学生とアルバイト、就活生と就職活動、若者と転職活動、出産・育児世代と人材派遣……といった具合に、ライフステージとそれに対応する「人材ビジネス」について詳細に解説している。
本書を読むと、新型コロナウイルスの流行、少子高齢化、AIの進化など、人材ビジネスはさまざまな局面に対応しながら姿を変えてきたことがわかる。採用人事担当者や経営者、人材ビジネスに関わる人はもちろん、ビジネスパーソンならば教養として知っておきたい内容が詰まった一冊である。
本書の要点
・人材ビジネスの代表的な4事業として、労働者派遣事業、職業紹介事業、特定募集情報等提供事業、請負事業がある。
・日本の高齢化が進んだことで、人材派遣業界でも高齢派遣労働者が増加している。派遣労働者の平均年齢は45.7歳で、全体の約70%を40~50代が占める状況だ。
・人手不足が深刻化して外国人の労働制度が緩和されつつある中、さまざまなバックグラウンドを持つ従業員が同じ職場で快適に過ごせるよう、事業者側の工夫が必要だ。
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