レビュー
親という言葉に毒をつける。毒親というのは非常にインパクトの強い言葉だ。
毒親はSNSなどでも非常に関心の高いトピックだ。毒親をテーマにした作品も多く目にするようになった。しかし、それを冷静に分析した人は少ないように思える。いや、そもそも冷静になれるようなものなのだろうか。本書のタイトルを見てみよう。『なぜ、愛は毒に変わってしまうのか』。ここには、毒親の毒は愛であるという重要な指摘が含まれている。
愛情が必ずしも子どもにとっていい影響を与えるとは限らない。その愛がなんらかの理由で適切に伝わらなかったとき、子どもにとっては毒になってしまうこともある。本書の強みは、批判されがちな親のふるまいの本質を分析しているところにあるのかもしれない。
しかし、客観的ではあっても決して他人事のような冷たさはない。むしろ、子どもや親の持つ痛みが心に突き刺さるようだ。著者の感性とたぐいまれなる省察力が、読者に当事者の痛みを伝えるのである。
毒親問題は、よく言われるような気の持ちようや本人の努力だけで乗り越えられるようなものではない。豊富な研究成果や事例の分析からくる客観的な視点、そして親と子の痛みを理解し寄り添う視点。このふたつの視点を用いて毒親問題を解決しようとするところに、本書の強みがある。
本書の要点
・人間は他の動物と違って、育児に必要な技術や知識をあらかじめ持っているわけではない。かつては、地域社会や親戚がそういった経験不足を補っていたが、今はなかなかそのリソースを活用しにくい。
・可愛がろうとするほど、かえって強く当たってしまうという仕組みが人間にはある。愛情があっても正しくそれが子どもに伝わらない。人はこうした矛盾と不条理を抱えて生きている。
・こじれた親子関係は脳の発達にダメージを与える場合がある。
フライヤーでは、話題のビジネス・リベラルアーツの書籍を中心に毎日1冊、10分で読める要約を提供(年間365冊)しています。既に3,300タイトル以上の要約を公開中です。exciteニュースでは、「要約」の前の「レビュー」部分を掲載しています。