レビュー
ここ10年の間、「働き方改革」という錦の御旗のもと、多くの企業で業務効率化や時短の取り組みが推進されてきた。一方で、なかなか成果が出ない企業も多いのではないか。
著者は、2016年から18年まで、社長特命により電通の「労働環境改革」にたずさわってきた。全社の残業時間を60%も削減したというから驚きだ。圧倒的・徹底的な時短、つまりタイトルの「鬼時短」を突きつめた人物といえる。現在はさまざまな企業に時短・業務改革の支援を行っている著者は、「時短は会社が社員に強いているムダをなくすこと」だと強調している。
「鬼時短」の肝は、現場に責任を求めず、経営陣や会社の姿勢にこそ根本的な「ムダ」の原因があるとする考え方だ。そもそもビジネスパーソンの多くは会社が求めるムダに最適化しているにすぎない。本書では、こうした現場の本音に寄り添い、8つの鉄則という形で時短プロジェクトを成功させるための要諦を明らかにする。
読み進むにつれて、「どうすれば現場をモチベートし、組織改革を成し遂げられるのか」について本質的な理解が得られる。今度こそ時短改革で成果を出し、組織のさらなる成長をめざしたいと考える方にとって必読の一冊である。
本書の要点
・時短プロジェクトで経営層が意識すべきなのは、「社長が私欲を訴えなければ、社員に届かない」という点である。
・現場を動かす際には、社長が「現場の主」と真剣に向き合い、納得を得ることが重要となる。
・時短プロジェクトを進める際は、業務を工程単位に分解し、どの業務にどれだけの時間がかかっているかを徹底把握する。現場の「すべて」を肯定しようという姿勢が必要だ。
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