レビュー
平成で一番読まれた新書『バカの壁』をはじめとした「壁」シリーズは、累計700万部突破の大人気シリーズだ。その最新作である本書で著者の養老孟司氏がテーマにするのは「人生」である。
人生で「壁」にぶつからない人など存在しない。問題はそれにどう対処するかだ。しかし、本書は、「人生の壁」を乗り越える特効薬を提示しようというのではない。むしろ、自分が排除したいと願う「壁」は、「抱え込むべき厄介ごと」かもしれない、自分こそが他人の人生の「壁」になっているかもしれないと、これまで考えていた「人生の壁」のイメージを塗り替えていく。人生の意義などわかるわけはない、結局はいまを懸命に生きるしかない、こうした言葉は、87歳になった養老氏から発せられるからこそ説得力がある。
人生相談も請け負う養老氏は「とらわれない」「偏らない」「こだわらない」という3つの人生哲学を通して、現代人が直面する「壁」を乗り越えるためではなく、受け入れるための指針を提示する。結局、人生は厄介なものなのだ。それを否定せず、むしろ楽しむこと。これこそが「人生の壁」を抱えながらも前進する力になる。養老氏の言葉には、壁にぶつかり悩みながら生きるすべての人々への温かいエールに満ちている。
本書の要点
・子どもに手間をかけたがる親は多いが、子どもは基本的には勝手に育つという視点を忘れてはならない。
・著者が小学生の頃、敗戦によって世の中がひっくり返った。解剖学の道に進んだのは、基礎学問がひっくり返ることがないと考えたからだ。
・人生相談への回答は、「とらわれない」「偏らない」「こだわらない」の3つに集約される。
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