レビュー

読書感想文という課題形式がある。日本の学校ではほとんどの場合避けて通れないため、苦労した記憶がある人も多いだろう。

しかしこうした「感想文」は、社会に出てから必要とされる「論理的思考」とはズレがあるように見える。論理的思考の鍛え方を説くビジネス書がこれだけたくさんあることはその証左といえるだろう。「感想文」こそが諸悪の根源であり、日本人を論理的思考から遠ざけている――と言われることさえある。
しかし本書は「論理的思考」には種類があると述べる。ある文章が論理的であると判断されるとき、それはあくまで一定の価値観から見た評価にすぎない。現在「論理的思考」と同一知されがちな様式は実はアメリカ式であり、だからといって他の文化圏の異なる形式が「非論理的」ということにはならないのである。フランスやイランでの「論理的」な形式はそれぞれ異なっているし、日本の「感想文」にもまた別の論理がある。
こうした文章の形式の差異は、それぞれの社会が重要とする価値観から生まれている。論理的思考は唯一不変の正解ではなく文化的なものである。本書を通じてそのことが理解できれば、場面や状況に合わせて異なる論理を使いこなすことができるだろう。真に論理的な思考を身につけるとは、論理的であるということそのものを相対化し、多元的な思考を身につけることなのだ。

本書の要点

・論理的思考は文化や社会の背景に影響を受け、領域(経済・政治・法技術・社会)ごとに異なる型を持つ。


・各国の作文形式(アメリカのエッセイ、フランスのディセルタシオン、イランのエンシャー、日本の感想文)は、それぞれの領域と文化的価値観を反映し、異なる論理を持っている。
・それぞれの社会や文化で求められる論理的思考の型が異なるため、重要なのはこれを理解し、多元的な思考法を身につけることだ。



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