レビュー

ドラえもんの秘密道具「アンキパン」に憧れた人は多いのではないか。アンキパンは本をパンに写しとって食べると丸暗記できるという夢のアイテムだ。

アンキパンは無理にせよ、テクノロジーは発達したというのに人間の頭の容量は変わらず、むしろインターネットや生成AIに頼れるようになった今、理解力や記憶力が落ちていると思うこともしばしば。生まれながらにして高い能力を備えている人をうらやましく思ってしまう。
ところが本書では、“理解力や記憶力はやり方次第で後天的に高められる”という嬉しい事実が、根拠となる論文や研究を明示して次々と明かされる。情報が絶え間なく更新される現代、一番ほしい能力の一つであるインプット力を飛躍的に向上させる方法を、スタンフォード大学・オンラインハイスクール校長である星友啓氏がテンポよく解説してくれるのだ。各所にポイントのまとめと読者の共感を呼ぶショートストーリーがあり、頭に入りやすい構成になっているのも、教育者ならではのアプローチだろう。
印象的だったのは、速読や記憶の定着に効果的なノウハウを、たとえば動画によるインプットなら「1.25倍速がおすすめ」といったように極めて具体的に教えてくれるだけでなく、モチベーション維持の方法や情報の見定め方まで指南してくれること。著者が言うように「最高のインプットには、最高のやる気の維持が大切」であるし、インプットする情報がフェイクニュースでは元も子もない。本書はかつてなく情報処理能力が問われる現代に必携の一冊となりそうだ。

本書の要点

・速読ができる人は「つまみ読み」している。つまみ読みのコツは、見出しやタイトルを先にしっかりと読むこと、全体を把握した上でそれぞれにかける時間配分を決めること、章やセクションのはじめと各段落のはじめに目をつけること、だ。
・より速く効率的にインプットするためには、読む前・読みながら・読んだ後の3つのフェーズに分けて「アクティブ・リーディング」を実践するとよい。
・インプットした内容をしっかり定着させるには「リトリーバル」が有効だ。

一度インプットした内容を意識的に脳の中から取り戻そう。



フライヤーでは、話題のビジネス・リベラルアーツの書籍を中心に毎日1冊、10分で読める要約を提供(年間365冊)しています。既に3,300タイトル以上の要約を公開中です。exciteニュースでは、「要約」の前の「レビュー」部分を掲載しています。

編集部おすすめ