レビュー

人は、なぜ生きるのか。
これは人類の普遍的な問いであり、宗教、文学、哲学など、あらゆる分野でその答えを探究してきた。

本書もそのひとつだ。
本書は精神科医、心理学者であるアルフレッド・アドラーの代表作を邦訳したもので、アドラー本人の著作としては初めて新書という手に取りやすいサイズで刊行された。アドラーは、フロイト、ユングとともに「心理学の三大巨頭」のひとりと称され、その思想のエッセンスが盛り込まれた『嫌われる勇気』はベストセラーとなっている。
一見すると意味を捉えにくい文章が続くが、読み進めるうちに、アドラーの主張が少しずつ見えてくる。本書で語られるのは人間が必ず直面する問題や、人の行動の根本となるものの原理など、時代や人間を選ばず受け取れるような内容ばかりだ。そこには尋常ならざる重みがある。
『嫌われる勇気』などでアドラー心理学に触れ、少しでも興味を持ったなら、ぜひ原点に立ち返り、本書を手に取ってほしい。心理学にはまったく触れたことがないという人、あるいは心理学にはあまり興味がない人であっても、アドラー自身の言葉は響くはずだ。問題にインスタントな「答えらしきもの」がすぐに得られてしまう現代だからこそ、本書を通じて、自分自身について、社会について、立ち止まってじっくりと考える時間を持ってはいかがだろう。

本書の要点

・人生における課題は、他者との生活、仕事、愛の3つに分けられる。これは人間が他者と生き、生活を成り立たせ、子孫を残すという目的のために生じるもので、生きている限り避けられない。
・問題の解決には、他者と生きる感覚である「共同体感覚」が不可欠だ。

これは生まれたときから形成される。過度に甘やかされた子どもは共同体感覚を正しく身につけられず、自分で問題を解決できなくなってしまう。
・生きることは、成長することだ。私たちは「完全」を目指す進化の流れの中にいる。正しい方向でその目標へ向かうために重要なのが「共同体感覚」である。



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