レビュー

「甘やかしては本人のためにならない、自分が若い頃はもっと厳しい環境だった」「パワハラだと言われそうで厳しく指導できない」――もしあなたが部下に対してこんなふうに考えているなら、本書を熟読することを勧める。
著者の梅澤康二氏は、法律事務所の代表であり、労務全般や紛争対応の第一線で活躍する弁護士だ。

本書では、梅澤氏が豊富な実務経験に基づいて85の具体的事例を挙げながら、パワハラとは何かを解説している。
複数の人をCCに入れたメールで叱責する行為や、ノルマ未達時に反省文を書かせる対応、過剰な進捗報告の要求、部下の手柄を横取りするような振る舞い、精神的に不安定になっている部下に対する休職の提案……これらがパワハラに該当するか、それとも上司として当然の指導の範疇なのか、あなたは即答できるだろうか。
本書は、誰でも「パワハラか、それとも指導か」と迷ってしまいそうな事例を挙げながら、パワハラと正当な指導の境界線を明らかにし、読者に自身の言動を振り返る機会を与えてくれる。健全な職場環境のもと、部下とともに大きな成果を出したいと願うリーダーにとって、必読の一冊だ。また、上司とのコミュニケーションに悩む人にも手に取ってもらいたい。

本書の要点

・「パワハラ」と「指導」を見分けるポイントは、行為が業務と関連しているかどうか、行為が業務遂行のために必要であるかどうか、行為が常識的に許容されるものであるかどうか、の3点である。
・企業は社員に対して注意指導をしたり教育訓練を行ったりする権利を有しているため、上司の注意や叱責に恐怖を覚えたとしても、それだけでただちに上司の行為が違法なハラスメント行為だとは断言できない。
・有給休暇の権利を行使した結果、仕事に差し支えが生じるかどうかは、会社が時季変更権を行使するか否かで判断されるべきであって、労働者が自ら検討する問題ではない。上司が有給休暇の取得を認めたのにもかかわらず、取得を叱責されたとしたら、その程度によってはパワハラに該当する可能性がある。



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