レビュー
人の顔と名前を覚えられない。資格試験の用語の暗記に苦労している。
そんなふうに、「もっと記憶力があったら!」と思ったことが誰にでもあるはずだ。自分は記憶力が悪いから……と諦めている人がいたら、本書の出番だ。
著者である青木健氏は、「メモリーアスリート」と呼ばれる、記憶力を競う競技メモリースポーツの選手だ。そんな人はきっと生まれつき記憶力が抜群で、試験でも苦労したことがないのだろうと想像するかもしれないが、実際はそうではない。著者は大学受験では浪人を経験し、メモリースポーツをはじめたのは大学に進学してから。そして、日本一になり、世界大会へ3度出場するまでに、記憶力を鍛え上げている。
そんな著者が、本書ではさまざまな記憶に関する悩みを解決できる100の方法をまとめている。記憶に関する研究成果を引用しながら、記憶力は訓練で鍛えられることを示し、そのための方法を紹介している。人の顔と名前を覚えるための具体的な手法や、試験勉強に使えるスケジュールの立て方など、シーン別に使えるメソッドが満載だ。
本書によれば、記憶力を向上させるために、生まれつきの才能はほとんど関係ないし、年齢を重ねても記憶力はそれほど低下しない。だとすれば、今から新しいことをはじめるのに、何の支障もないはずだ。記憶について理解を深めることで、仕事のパフォーマンス向上がねらえることはもちろん、自分の可能性を広げることもできるだろう。
本書の要点
・一般に「記憶力が良い=生まれつきの才能」と思われがちだが、遺伝と教育環境の相関性に関する研究によれば、記憶力の遺伝要素はそれほど高くない。環境やトレーニングによって、記憶力は十分に向上させることができる。
・「顔は見たことがあるけど誰だっけ?」という状況が発生するのは、今までに見たことがあるかどうかを判断する「再認記憶」はできているが、完璧に思い出すことができる「再生記憶」にはなっていないためだ。
・何かを覚えるとき、記憶術を使っても、復習なしで長期間覚えておくことは難しい。学習計画は、復習込みで立てるのが望ましい。
フライヤーでは、話題のビジネス・リベラルアーツの書籍を中心に毎日1冊、10分で読める要約を提供(年間365冊)しています。既に3,300タイトル以上の要約を公開中です。exciteニュースでは、「要約」の前の「レビュー」部分を掲載しています。