レビュー
厚生労働省の「労働安全衛生調査(実態調査)」によると、メンタル不調が原因で1ヶ月以上の休職または退職をする人は、全事業所の10%以上にのぼるのだという。明確に「メンタル不調」とわかっているだけでこの数なのだから、「メンタル不調予備軍」まで含めれば相当数いることは容易に想像できる。
しかし実際、病院でメンタル疾患と診断されるほど悪化してしまうと、「治す」のはとても大変なのだという。再発の可能性も高いため、病気とは一生のつき合いになる。だからこそ、メンタル不調に陥る「前に」相談することが大切なのだと著者は主張する。
著者は、法人向けオンラインカウンセリングサービス「Smart相談室」の設立者・藤田康男氏だ。大手からスタートアップまで数多の企業に対応してきた経験から、社員が会社に相談できない理由、安心して相談できる場やシステムづくりの基本、相談を受ける際の心構えなどを解説する。
本書によれば、会社が社員にとって第一のコミュニティだった時代は終わり、会社にとっても社員は「人的資本」となった。会社は社員という「資本」のパフォーマンスを最大限に引き出すためにも、多様な価値観に基づいたサポートを模索しなければならないと著者は主張する。社内のサポート体制づくりについて、重要な視点を与えてくれる一冊だ。
本書の要点
・メンタル不調が原因で休職・退職する人は全事業所の10%以上にのぼる。年収480万円の社員が1名退職した場合、単純計算で1104万円の損失となる。企業にとって社員を退職させないことは重要な課題であり、メンタル不調を未然に防ぐ努力が必要だ。
・企業は社員の安全と健康に配慮する義務がある。社員のメンタル不調の原因がプライベートなものだったとしても、会社として対応しなければならない。
・社員の相談に乗る際は、真摯に相手の話に耳を傾けよう。悩みを解決しようとする必要はない。
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