レビュー

「稽古」という言葉からどんなイメージを抱くだろうか。茶道や華道、武道、舞踊、工芸――こうした稽古を続けている人に対し、要約者は憧れの念を抱いていた。

いざ師匠をつけて稽古をするというと、「敷居が高そう」「続けるのが難しいのではないか」という気持ちがあった。
ところが、非常に多忙なエグゼクティブたちの中でも、稽古に打ち込む人は多いのだという。そこまで人々を魅了する稽古とは何なのか。
実は稽古にはこんな効能がある。たとえば、リフレッシュできる、心身が整ってパフォーマンスを発揮しやすくなる、立場を超えて本質的な人脈が育まれる、といったことだ。
著者は、師、知性、道具立て、美意識、健康、コミュニケーション、仕事、精神性という8つの観点から、稽古の本質をひもといていく。「美意識」のような文化・歴史の観点や、「知性」のような認知科学の観点、「仕事」への応用の観点など、切り口が実に多彩である。それぞれを行き来することで見識が広がっていくだろう。
稽古は、AIが持っていない「身体」と「感性」を活かして、高度な知性を発展させる方法である。しかも、海外で注目される日本文化の豊かな伝統や「暗黙知」が凝縮されている。本書を読むと、稽古によって培われる力は、まさに現代のビジネスパーソンに求められる力だと思わずにいられない。稽古の奥深さにふれる中で、人間的な成熟への指針が心に刻まれていくのではないだろうか。

本書の要点

・稽古には、リフレッシュ効果や心身の健康維持、創造力や問題解決力の向上、深いコミュニケーション能力の育成などの効果があるとされている。
・AIが進化する現代において、稽古を通じて「身体」と「感性」を活かした高度な知性を発展させることが、エグゼクティブに求められる力である。
・一流の人々が道具を大切にする理由は、道具の微細な変化に敏感になることで、より高度な技が可能になるからだ。



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