レビュー
自分に自信がないのは、自分が他人よりも劣っていることが原因ではない。子どもの頃から、自分の弱点を利用され、心理的な操作を受けてきた結果である。
そう教えてくれるのが、本書『「やさしさ」と「冷たさ」の心理』だ。もともと20年以上前に出版された書籍だが、2024年に発売された新装版に至るまで多くの人に求められている。著者は、ラジオ番組「テレフォン人生相談」(ニッポン放送)のパーソナリティーを半世紀以上務めていることでも知られている、社会心理学者の加藤諦三氏である。
特に印象に残ったのは、自分が心ひかれる相手は、必ずしも自分にとって必要な存在ではないということだ。
自分に自信がない人は、自分のことを軽蔑する人にひかれ、劣等感が強い人は劣等感が強い人と一緒にいると安心する。「そんなことあるのだろうか」と思うが、そのメカニズムにはとても納得した。本当につき合うべき相手を選び、過去の自分を操作してきた相手や有害な人から自立するための方法を、本書は提案してくれる。
何ごとにも自信が持てないという人はもちろん、自分だけが嫌われているなどと人間関係に自信を失っている人にもおすすめしたい。加藤諦三氏が、厳しくもやさしく、明るい人間関係へと背中を押してくれるはずだ。
本書の要点
・子どもの頃に親から十分に愛されてきた人は、甘えの欲求が満たされている。
・自分に自信がない人は、自分のことを軽蔑する尊大な人と一体化することで安心感を得ようとする。尊大な人も一人で生きられないため、お互いに共棲することで心理的な安全を得ている。
・自分の周りに好意がないのではなく、自分に不安や葛藤があるがゆえに相手の好意を拒絶しているのだ。
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