レビュー

「すぐに対応します」「今この場で決めましょう」――仕事をしていると、一日に何度も口にしたり見聞きしたりする言葉だ。即断即決し、即行動に移せる人は、どのような組織においても「仕事のできる人」と扱われる。

だが、そうしたスピード一辺倒の行動が、かえって組織に悪影響をもたらしているとしたら?
本書では、ワークスタイルと組織開発の専門家である沢渡あまね氏が、組織におけるネガティブ・ケイパビリティの大切さについて論じていく。
ネガティブ・ケイパビリティとは、すぐ解決しようとしない行動特性および能力のこと。「すぐに対応します」「今この場で決めましょう」とは対極にある考え方だ。
あまりピンとこない人も安心してほしい。本書では、ネガティブ・ケイパビリティの足りない組織に中途入社した黒部みゆきを主人公とした12の「あるある」エピソードが紹介されている。目先の話しかしない1on1ミーティング、「自分でやったほうが早い!」でマネージャーやリーダーが仕事をもっていくチーム、「で、あなたはどうしたいの?」が繰り返される会議……いずれも「あるある」エピソードの一部だ。読み進めているうちに、ネガティブ・ケイパビリティ不足の組織に何が起こるか、その状況を変えるにはどうすればいいかが、スムーズに理解できるだろう。
たいていの読者は、本書を読んで、自分の組織にはネガティブ・ケイパビリティが足りないと気づくだろう。息苦しい働き方をやめ、よりクリエイティブに成果を出していきたい人にとって、大切なヒントになるはずだ。

本書の要点

・ネガティブ・ケイパビリティとは「すぐ解決しようとしない行動特性および能力」のことだ。ネガティブ・ケイパビリティのある仕事の進め方とは、じっくりものごとを観察し、人々と対話をし、良好な関係を構築しながら真の原因を特定したり、意外なアイデアや能力と出会って新たな解決方法を見つけたりするといったものだ。
・ポジティブ・ケイパビリティとネガティブ・ケイパビリティはいずれも必要であり、いずれか一辺倒ではうまくいかない。


・次から次にタスクや仕事を捌こうとする「ポジティブ・ケイパビリティ優位な組織」を変えるには、タスクや仕事を重要度×緊急度のマトリクスで整理して、皆で眺める習慣をつけるとよい。



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