レビュー

日本で生まれ育った人なら、日本語くらい読めて当たり前——。そんなふうに言われることがあるが、実際には「日本語の文なのに読んでも意味が分からない」「内容が頭に入ってこない」ということは少なくない。

では、ある文章を「読んでも分からない」とき、どうしたら「読んだら分かる」に変えることができるだろうか。改めて考えてみると、「読んだら分かる」は無意識に起きるため、意識的にその状態に到達しようとすることは難しく感じられる。
本書『読めば分かるは当たり前?』は、読解プロセスを段階に分けて解説しながら、どこに問題があるのかを考えることで、「読んでも分からない」の正体を示そうとする。一口に「読んでも分からない」と言っても、文字の認識がうまくいっていない場合もあれば、知らない単語でつまずいている場合、文同士のつながりが把握できていない場合もある。普段は一瞬のうちに、無意識に起こる読解のプロセスを、細かく分けて捉え直すことで、読解がうまくいかないときにどうアプローチするべきなのかも明確になっていく。
つまずくポイントは様々であるため、誰にでも有効な読解力を上げるための特効薬は存在しない。だからこそ、やみくもに「読解力向上法」を試すよりも、自分が読解のどの段階につまずいているかを意識しながら、その段階に応じたアプローチを選ぶことが重要だ。その際、「読解力の地図」を示そうとする本書は、大きな助けになることだろう。読解力を本質的に捉え直したいすべての人にとって有益な一冊だ。

本書の要点

・読解には、第一の目的地である「表象構築」と、そこから枝分かれする第二の目的地である「心を動かす読解」と「批判的読解」の3つの目的地がある。
・表象構築に至るまでには、文字の同定、単語の同定、単語間の関連理解、文間の関連理解と、たくさんの山を越えなければならない。
・読解のための方略は「理解補償方略」「内容学習方略」「理解深化方略」の3つに整理できる。

これらを念頭に、それぞれの読解方略がどこで役立ちそうか考えながら実践してみるといい。



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