レビュー
2025年1月28日、経済アナリストの森永卓郎さんが逝去した。本書は卓郎さんと、その子息であり同じく経済アナリストとして活躍する森永康平さんによる共著である。
原稿は2024年末に完成したという。出版に際して卓郎さんのパートに修正を加えることもできたが、康平さんはあえて一文字も直さずに「GO」を出した。
本書では、日本の経済政策、政治、社会問題などについて、父子が章ごとに交互に論を展開する。二人の視点はしばしば対立し、たとえば卓郎さんが「これから恐慌が来るから、いまは投資をすべきではない」と主張すれば、康平さんは「その可能性も否定できないが、インフレ下では投資をしないほうがリスクではないか」と呼応する。このように、それぞれの視点が補完し合う形で進んでいく本書は、まるで「一対の、二つ揃って初めて完成する作品」のようである。
意見の違いは多々あるものの、両者に共通するのは「日本という国への深い愛情」である。親子でありながら、一方が他方に意見を押し付けることなく、それぞれを独立したプロフェッショナルとして認め合っている。その姿勢は、たとえ親子でなくとも難しいものであり、これを実現している点に深い敬意を抱く。
本書は「どちらが正しいか」を決めるものではなく、それぞれに学ぶべき視点を提供する。読者には、ただ意見を鵜呑みにするのではなく、「では自分はどう考えるのか?」と問いかけるきっかけにしてほしい。
本書の要点
・世界経済はあらゆるセクターが過熱状態にある「エブリシング・バブル」が起きており、大暴落のリスクが高まっている。(森永卓郎)
・「経済は成長し続ける」という前提でいるのは危険だ。
・日本の経済政策の考え方には誤解が多く、それが社会問題の解決を阻害している。(森永卓郎)
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