レビュー

日本が世界に誇る技術と言えば、何が思い浮かぶだろう?
本書では、寿司、アニメに加えて、大工をはじめとする「建設職人」が挙げられている。その理由を聞いて納得。

災害後の鉄道・道路などの復旧の速さから、海外の人に「日本の職人は魔法を使えるのか?」と驚かれることもあるほか、「建築界のノーベル賞」と呼ばれるプリツカー賞を世界で最も多く受賞しているのは日本人だそうだ。
著者の髙木健次氏は、祖父が建設会社の創業社長、父が二代目社長、姉が建設部門の技術士という建設一家に生まれた。物心ついたときから身近にペンキと建設現場があり、小学生の時から雑誌のゼネコン特集を読んでいたという。新卒では別業界を選んだものの、東日本大震災などをきっかけに建設業界に転じ、現在は工事会社向けにITサービスを提供する企業の創業メンバーとして活躍している。
そんな日本の建設業界について、本書では、さまざまな角度から解説されている。例えば、就業者の18%が女性であることや外国人は3%弱にすぎないことは、意外に感じる人も多いのではないだろうか。建設業界では建設職人の有料人材紹介や人材派遣が禁止されており、職人はSNS経由のリファラルなどで転職を決めることや、土木工事へのドローンや3Dプリンターの導入が進み、若手職人の修業期間や災害復旧工事にかかる日数が短縮されていることも驚きだ。ぜひ本書を読んで建設の世界の奥深さに触れてほしい。

本書の要点

・建設業界では、社員の転職・退職をきっかけとした「人手不足倒産」が急増している。
・テクノロジー活用により、土木工事の効率化が進みつつある。例えば、被災地をドローンで調査し、映像から3Dデータを生成して、3Dプリンターを使って全国で部材を「印刷」し、被災地に輸送することで、復旧工事にかかる日数を短縮できる。
・2024年4月より、定められた上限以上に社員を残業・休日出勤させると罰則の対象になったが、建設業界では多くの企業が未対応だ。

その要因の一つとして、未だに紙での管理が主流で、事務作業にかかる工数が多いことが挙げられる。



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