レビュー
総理大臣の眼差しは地方の何を見つめていたのだろうか。著者は現在の日本政治で最も責任の重い職に就いている。
本書は、総理大臣就任までの10年間に刊行された著書から、日本を考えるうえで重要だと考えられる論考がまとめられたものだ。そこには地方創生担当大臣としての経験が色濃く出ている。その背景にあるのは、地方消滅への危機感である。
著者はいう。今は国家存亡の危機であると。
危機とは、混沌を極める国際情勢だけを意味しない。人口減、高齢化社会という国内状況こそが、すでに起こっている未曾有の危機なのである。これを解決する糸口が「地方創生」という言葉にある。
政治にまったく無関心という人は少ないはずであるが、それでも政治家が普段何をし、何を考えているかに触れることもまた少ない。内閣を束ねる総理大臣についても同じことがいえる。
本書は現職の内閣総理大臣の解像度を上げる手掛かりになる。そこにあるのは、有権者が喜びそうな美辞麗句や楽観的な精神論ではなく、耳をふさぎたくなるような日本の現状認識と、その状況から一縷の光明を見出すような徹底した現実主義である。読み始めたときは思わず息をのむが、読み終わるときには前を向いている。そんな不思議な読書体験ができるだろう。
本書の要点
・今日本は国家存亡の危機にある。それは軍事的な脅威だけでなく、少子高齢化によるものだ。「地方創生」の取り組みの根本には、この危機感がある。
・地方創生とはバラマキを意味しない。このまま地方が衰退すれば、やがて東京が衰退し、日本の衰退につながる。だから、地方をよくすることでその流れを食い止めなければいけない。
・「私たちの町には何もない」「普通の町でいい」そう言いたくなるかもしれないが、今まさに普通のまちが消えていこうとしている。だから普通のまちとしての危機感を持たなければいけない。
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