レビュー
「ブランディングに成功した企業」として真っ先に思い浮かぶのは、アップルである。シンプルでスタイリッシュなプロダクトに加え、独自の世界観を表現した広告。
しかしここで重要なのは、アップルの成功は決して「ブランディング」が要因ではないという点だ。まず優れたプロダクトがあり、そこに広告の洗練されたイメージが加わった。たとえば有名なCM「Think different.」は様々な広告賞を受賞し、いまなお語り継がれているが、「売上」への貢献は限定的であったという。
実際にアップルが売上・時価総額ともに世界トップに躍り出るのは、「Think different.」の数年後、MacBookやiPhoneが発売されてからである。「アップルはブランディングに成功した」というのは、結果論にすぎないのだ。
人は美しいものやかっこいいものに惹かれるが、だからといって「買う」とは限らない。たとえば自宅にある日用品や化粧品、電化製品は、見た目や雰囲気で選んだだろうか? それも決め手の1つだったかもしれないが、「使いやすい」「効果を感じている」「値段がちょうどいい」といった理由が大きいはずだ。
本書では、世間に広まっている「ブランディングの誤解」を解き、真に効果の出るブランディングを教えてくれる。もしいま、なんとなくブランディングに取り組もうとしているなら、その手を一旦止めてほしい。まずは本書を読み、正しい道筋を知ってからでも遅くはないはずだ。
本書の要点
・「ブランディング」という言葉は定義が曖昧で、過剰期待を生んでいる。ブランディングに力を入れても、その商品・サービスの便益や独自性が弱ければ、顧客の購買にはつながらない。
・買うかどうかの決め手となるのは「便益」と「独自性」である。
・ブランディングの目的は「想起性の確立」「情緒的・心理的価値の提供」「インナーブランディング」の3つである。
・ブランディングによる事業成果は「NPI(次回購入意向)」で測ることができる。
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