レビュー

相手に何かを伝えようとするとき、あなたは何を意識するだろう。多くの人は、自分の考えていることをいかに正確に、具体的に言葉で表現するかに注力するのではないだろうか。

自分の頭の中をいかに言語化するか。それもコミュニケーションにおいて必要なことだ。しかし、「相手に伝える」ことを考えるとき、それ以前に考えなければならないことがある。それが、「相手の視点を考える」ことだというのが、本書の主張だ。
本書にこんな質問が登場する。「とんかつは洋食ですか。和食ですか。」あなたの答えはどちらだろうか。身近な人にもぜひこの質問をしてみてほしい。そしてその理由を聞いてみてほしい。「とんかつ」ひとつとっても、いかに人によって持っているイメージが違うかが実感できるはずだ(ちなみに要約者は「とんかつは和食」派である)。
人は無意識に自分を中心に考えてしまいがちだ。人はそれぞれ違う考えを持っているということは、頭では理解できていても、「自分がこう思っているから相手もこう思うはず」「自分はわかるのだから、こう伝えれば相手もわかってくれるはず」と思ってしまう。
本書はまず、自分と他者は違う視点を持っているということを脳科学の視点から理解し、その上で相手の特性に合わせた「伝え方」のテクニックを指南する。テクニックのひとつひとつは手軽なもので、すぐにでも実践できそうなものばかりだ。
「人と人はわかりあえない」という前提に立てばこそ、コミュニケーションをより豊かなものにできることを、本書は教えてくれる。

本書の要点

・相手に何かを伝えたいとき、言語化は重要だが、それ以前に「視点の理解」をすべきだ。自分の見ている世界と相手の見ている世界が違うことに気づき、それを尊重し、その違いを埋める努力をすることが、「コミュニケーション能力が高い」ということである。
・相手と世界の見え方が違っていることを、「認知のズレ」と呼ぶ。これは「脳のバイアス」によって発生する。人にはそれぞれのバイアスがあるため、わかりあうことは難しい。「人と人はわかりあえない」という前提に立つことで、相手にやさしい視点や多様なものを認める思考が身につく。



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