レビュー

報告書を作るために調査をして、情報をまとめて、執筆するという作業は困難な過程を伴う。どのような方法で調査を行うか、期間をどのくらいかけるのかといった現実的な問題から、そもそも何のために調査をするのか、何をテーマとするのかという根本的な問題まで、考えなければならないことが山ほどあり、調査や執筆に慣れていなければ、どこから手を付ければよいのかと途方に暮れてしまうことだろう。


学術的な研究においては、調査研究から論文執筆までの過程の方法が確立されており、その方法に沿って作業を進めれば、しっかりとした論文を作成することができる。しかし、型に沿えば必ず「面白い論文」を作成できるわけではない。必要なのは、筋の良いリサーチ・クエスチョンを設定することだ。
本書は、一般的な型に沿った論文や報告書を作成する方法だけでなく、その価値を高めるための視点についても解説されている。特に重視されているのが、調査報告の過程で行われる、完成された論文には出てこない、隠れた試行錯誤だ。実際に調査や研究を進めていくと、途中で当初の見込みとは違う情報や課題が見つかることは多々ある。それによって、当初の問題意識が修正されて、さらに新たな課題が見えてくる。調査研究のこのような過程を活かすことで、調査内容が面白いものになっていく。本書で提示されているこのような方法は、学術研究だけでなく、様々な業種で必要とされるリサーチにも大いに活かされるだろう。

本書の要点

・報告書や論文を作成する際、型通りに完成させようとするだけでなく、調査・研究の途中における問いの試行錯誤の経緯を大切にすることで、筋の良いリサーチ・クエスチョンを立てられるようになる。
・リサーチ・クエスチョンは、「5W1H」ではなく、Whatの問い(どうなっているのか?)とWhyの問い(なぜ、そうなっているのか?)に、How toの問い(どうすれば良いか?)を加えた「2W1H」の間を何度も往復することで洗練されていく。
・筋の良いリサーチ・クエスチョンは、意義、実証可能性、実行可能性の3つの条件を全て満たすものである。



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