レビュー
誰しも一度は、誰かにマウントを取られて不快な思いをした経験があるだろう。あるいは逆に、自分が誰かについマウンティングしてしまい、後悔したこともあるかもしれない。
本書は、そうしたマウントの背景に存在する心理を解き明かす一冊である。相手をイラッとさせる態度の裏には何があるのか――。その言動の源にある「拒絶過敏性」や「パッシブ・アグレッション」といった概念を通じて、人間の心理を読み解いていく。
著者の片田珠美氏は、豊富な臨床経験をもつ精神科医だ。ベストセラーとなった『他人を攻撃せずにはいられない人』や『職場を腐らせる人たち』を読んだ人も多いだろう。
読み進めるうちに、「あの人がマウントを取りたがるのは、そんな理由があったのか」と他者の行動への理解が深まるだけでなく、「自分はどうだろう」と内省を促され、怒りや羨望といった感情への対処法が身につくはずだ。読み終えた頃には、不毛なマウント合戦から一歩引いた視点と、落ち着いた心を得られているに違いない。
同僚や友人との人間関係に疲れている人や、なぜかいつも誰かと張り合ってしまう自分にモヤモヤしている人にとって、きっと参考になるだろう。
本書の要点
・相手の意見や批判に過剰に反応し、感情的に攻撃する背景には、「拒絶過敏性」が潜んでいる可能性がある。このようなケースでは、たとえ相手の機嫌を損ねるとわかっていても、最低限の指摘はしておくべきだ。指摘内容は必ず文書に残し、ときには録音するなどの工夫も必要である。
・不機嫌な態度によって相手をコントロールしようとする人に対して、あなた自身が「イネーブラー」になってしまっている可能性がある。
・マウントを取りたくなったときは、それによって起こり得る事態を想像して、自制する必要がある。
フライヤーでは、話題のビジネス・リベラルアーツの書籍を中心に毎日1冊、10分で読める要約を提供(年間365冊)しています。既に3,300タイトル以上の要約を公開中です。exciteニュースでは、「要約」の前の「レビュー」部分を掲載しています。