レビュー
地球は平面であり、海の向こうに世界の果てがあるとする「地球平面説」を信じる人のことを、馬鹿げていると考える。その一方で、ケネディ暗殺犯のオズワルドが逮捕2日後に殺された裏に、ある組織が関係していることは、「事実」として受け入れる。
陰謀論とは、「世の中で起きている問題の原因について、不確かな根拠をもとに誰かの陰謀のせいであると決めつける考え方」を指す。その意味では、政治家の不祥事を見て、「政治家なんてみんな悪党だ」と考えることも、陰謀論的思考といえる。それが「善良な市民であろうとする規範意識」と結びつくなら、「公共の秩序を底支えする積極的な役割」を担えるかもしれない。
しかし、インターネット空間があまりに多量の陰謀論を溜めこみ、そこに誰もがアクセスできる現代、その内容は無視できないレベルの過激さをたたえている。「陰謀論が現実を凌駕するようなケースさえ生まれている」という。どれだけ事実の積み上げで否定されようと、「郵便投票に不正があったからトランプは2020年の大統領選で敗北した」「ユダヤ人が国際政治を牛耳っている」と信じる人はいなくならない。
わたしたちの多くはすでに、「陰謀論から影響を受けているという事実」に目を向け、「陰謀論と正しく向き合う方法を考えるため」に書かれたのが本書である。良かれ悪しかれ、あなたは陰謀論的思考と無縁ではない。その前提に立ちつづけていなければ、知らぬ間に際どい陰謀論へとはまりこんでしまうこともあるのだ。大切な人を守るためにも、ご一読いただきたい。
本書の要点
・単なる「偶然の一致」にしかすぎないものに、人間の脳は「過剰な意味を読み込んでしまう」。そこに陰謀論が生まれる。
・陰謀論は、「出来事の原因を誰かの陰謀であると不確かな根拠をもとに決めつける考え方」と定義される。この意味では、誰にも陰謀論の萌芽はある。
・「世界をシンプルに解釈したいという欲望」と「何か大事なものを『奪われる』感覚」が陰謀論を誘発する。
・陰謀論の日常化は現実社会にパラレルワールドを出現させ、「現実に起きている基本的な事実を共有すること」も難しくなる。
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