レビュー
「なぜ若者は、あっさり辞めてしまうのか」「どうすれば、若者のやる気を引き出せるのだろう」。そんな嘆きを口にしたことがある人は多いだろう。
著者の上田晶美氏は、日本で初めて「キャリアコンサルタント」という肩書きを名乗り、これまでに約2万人のキャリア相談に応じてきた第一人者だ。大学生の就職支援から、社会人の転職支援、主婦の再就職支援まで幅広く関わり、現在は100人規模の講師陣を擁するキャリア支援会社を経営している。
本書は、「3年で転職」が前提となりつつある若者世代のリアルな価値観を明らかにしながら、旧来型のマネジメントではもはや通用しないことを丁寧に示していく。若者に共通する思考や不安、行動原理に寄り添いつつ、どうすれば若者と信頼関係を築き、相手の能力を引き出せるか、具体的なコミュニケーション術や制度設計のヒントが提示されている。
特に、「職場内にロールモデルがいない」「キャリアパスが明確に示されていない」ことが、若者の不安や早期離職につながるという指摘は重い。これからの職場に必要なのは、「辞めさせない努力」ではなく、「辞めても関係が続くような関係性の構築」であるという主張も、多くの上司にとって新鮮だろう。
若者との関係づくりに悩む上司や新人採用・育成に難しさを感じている人事担当者・経営層に、本書は多くの気づきを与えてくれるはずだ。
本書の要点
・若者の多くが転職を前提に就職し、3年以内に離職するのも珍しくない現在、企業主導の人事異動ではキャリア形成が難しくなっている。今後は従業員の「キャリア権」を尊重し、自律的な働き方を支援する職場づくりが求められる。
・若者の多くは「3年で転職」が前提という感覚で働いているため、今の職場でしか通用しない経験や昇進には魅力を感じにくくなっている。
・「会社を辞めることは悪」という考えは時代遅れとなった。
フライヤーでは、話題のビジネス・リベラルアーツの書籍を中心に毎日1冊、10分で読める要約を提供(年間365冊)しています。既に3,300タイトル以上の要約を公開中です。exciteニュースでは、「要約」の前の「レビュー」部分を掲載しています。