レビュー

本書の前作『ティッピング・ポイント』は、自殺やテレビ番組の流行といった社会現象を、伝染病の原理を応用して解明しようとした点が画期的で、世界的ベストセラーとなった。
カギとなったのは、「少数者の法則」「粘りの法則」「背景の力」の三原則である。

少数者の法則は、社会を変えるわずかな人数の影響力を指す(前作では経済学の80:20の法則を引き合いに出し、伝染にはさらに少ない人数が影響を与えるとした)。粘りの法則は、人々の記憶に残る強い感染力を意味し、背景の力は、環境の違いが伝染の広がりに大きく影響することを示す。これら三つの原則を掘り下げたうえで、「リソースは一点に集中させること」「世界は直感どおりには動かない」という二つの教訓を導き出した。一見手に負えない社会現象を、ストーリー調で明快に解説した名著といえるだろう。
そして今回の新著では、25年の時を経て、「空気感」「スーパースプレッダー」「ソーシャル・エンジニアリング」という新たな三つの視点から、社会的伝染のメカニズムを掘り下げていく。注目すべきは、ソーシャル・エンジニアリング、すなわち社会への介入の難しさを問う姿勢だ。社会をデザインする際の倫理的ジレンマを描きながら、混沌とした現代社会への希望も託されている。まさに現代にこそ読まれるべき意欲作である。読後には「社会の空気をどう設計するか」を考えずにはいられないだろう。

本書の要点

・社会現象は、空気感や集団構成の条件が整うと「ティッピング・ポイント」に達して一気に広がる。
・社会的伝染の新たな原則は、「空気感」「スーパースプレッダー」「ソーシャル・エンジニアリング」の三つである。
・ティッピング・ポイントは意図的に操作されるケースもあるが、よりよい世界をつくるために活用できる。



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