レビュー

「なんだか最近イライラしやすい」「小さなことで不機嫌になってしまう」「悲しみを引きずりがち」――そんな自分に嫌気がさした経験はないだろうか。怒りや不機嫌、悲しみは誰にでも訪れる自然な感情であるにもかかわらず、職場や家庭、人間関係の中で悪影響を及ぼし、後悔を呼ぶことも多い。

本書は、そうした感情とどう向き合い、どう扱えばいいのかを教えてくれる一冊である。
著者の藤野智哉氏は現役の精神科医であり、公認心理師でもある。秋田大学医学部を卒業後、精神科勤務や医療刑務所での診療に携わるかたわら、執筆にも精力的だ。SNSでも多くの共感を集め、Xには11万人以上のフォロワーを持つ(2025年7月現在)。
本書は、怒り、悲しみ、不機嫌、つらさという4つの感情・状態を多角的に捉え、さらに専門家への頼り方についても解説している。特に注目したいのは怒りの章だ。怒りやイライラは単なる性格ではなく、防衛反応や「べき思考」の押しつけから生まれるものだと説明し、その感情をどうコントロールするかを具体的に示している。
ネガティブな感情は責められるべきものではなく、「生じて当然のもの」というスタンスを貫いたやさしい書きぶりも魅力だ。読めば、自分のネガティブな感情を受け止め、うまく「飼いならす」視点が手に入るだろう。不機嫌に振り回されずに生きたい人、人間関係のストレスを減らしたい人、感情の扱い方を学びたい人に一読を勧めたい。

本書の要点

・アンガーマネジメントでは、怒りが湧いたら6秒数える、対象から離れる、心を安全地帯に飛ばす、特定の言葉を唱える方法が有効だ。自分なりのルールや習慣を持つことで感情をコントロールしやすくなる。


・悲しみを和らげるには、注意をそらす「ディストラクション」や意味を前向きに捉え直す「認知的再評価」が有効だ。さらに悲しい理由や不安を具体的に書き出すことで整理が進む。
・機嫌よくいることには多くのメリットがあるが、常に誰にでも機嫌よく接する必要はない。どんな相手にどんな自分でいたいか、その基準を持つことが大切だ。



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