レビュー
マネジャーになったからには、「部下との関係づくり」や「適切な声がけ」が大切だと頭ではわかっている。しかし、いざどう行動に落とし込めばいいのかは誰も教えてくれない。
著者の井上大輔氏は、数々の企業でマネジャーを歴任してきたが、団体行動が大の苦手でマネジャーには向いていないタイプだと自認している。だからこそ、マネジャーの役割を果たすために身につけるべき能力を言語化し、体系的に整理することができた。それをストーリー仕立てにまとめ、書籍化したのが本書である。
本作の主人公である内藤は、自身が代表を務める会社で組織崩壊を経験し、マネジメントに自信をなくしていた。内藤がピープルマネジメントのプロであるフルさんにトレーニングを受けることになるところから、物語は始まる。読者は内藤といっしょにフルさんのレッスンを受ける気分で物語を読み進めることができる。内藤の悩みや奮闘ぶりに共感しながら、「部下とランチに行って親睦を深める」「1オン1を実施する」といったありがちな解決策が次々に疑い直され、刷新されていくのが痛快だ。読み終えれば、内藤のように「今、自分が何をすべきか」がクリアになっていることだろう。たしかな理論に裏打ちされたマネジメント手法を身につけたい——そんな想いに応える、実践知に満ちた一冊だ。
本書の要点
・マネジャーの仕事の本質は、リーダーが定めたゴールにいち早く辿りつき、メンバーの力を最大限に引き出すことだ。
・1オン1は、マネジメントの手段ではなく「手段の入れ物」だ。
・マネジメントの5つの手段は、「リレート(関係をつくる)」「デリゲート(委任する)」「キャリブレート(軌道修正する)」「モチベート(背中を押す)」「ファシリテート(チームワークをつくる)」である。
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