レビュー
「3年で3割が辞める」「転職志向が強い」――そんな言葉で語られるZ世代の価値観や行動に、疑問や違和感を抱いたことのある人は少なくないだろう。だが本書を読めば、この世代への理解が深まるはずだ。
本書によれば、若者が3年で3割辞めるのは事実である。しかしその理由は、決して堪え性がないからではない。不確実な時代を生き抜くために「常に自分をアップデートしなければ」という切迫感に背中を押され、より多くの経験を積める環境を求めているのである。
本書は、Z世代のリアルな姿を豊富な調査とインタビューを通じて描き出している。取り上げるテーマは、仕事と働き方にとどまらず、政治と起業・地元志向、恋愛と結婚、家族と出産、消費とSNS・友人関係にまで及ぶ。
なかでも印象的なのは仕事観である。第一志望の大手企業に内々定したその日に転職サイトを眺める学生や、「人生を倍速で生きています」と語る若手起業家など、多様な声を通じてZ世代のリアルに迫っている。
著者の牛窪恵氏は、世代・トレンド評論家として「おひとりさま」「草食系」といった社会を動かすキーワードを次々と世に送り出してきた人物だ。内閣官房や財務省などでの委員・研究会メンバーのほか、企業との消費者研究も数多く手がけてきた、豊かな実績を持つ。
読み進めるうちに、Z世代の行動は合理的で緻密な戦略に基づいたものであることが分かる。Z世代の部下を持つ上司や採用・教育に携わる人、この世代をターゲットとした商品開発やマーケティングに従事する人に勧めたい。読めば自らの価値観をアップデートできるだろう。
本書の要点
・Z世代の働き方を理解するうえで重要なキーワードは「二刀流」と「先回り」である。この世代は、何が起こるか分からない時代だからこそ、常に自分を守るための「お守り」として複数のアイテムや装備を持っておきたいと考えている。
・Z世代を対象とした施策のキーワードとなるのは「『多様』を『個別』に落とし込む」と「『古い』を『新しい』に活かす」だ。
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