レビュー

本書は起業家・投資家として知られる小澤隆生氏の評伝である。
ECの先駆けとなるIT企業をつくり、その売却によって楽天の幹部となり楽天イーグルスを設立、ヤフーではPayPayを立ち上げて社長に就任。

その後は投資家として活躍――と、その経歴は実に華々しいものに思える。誰もが知る日本の天才起業家のひとりと言って、異論がある人はいないだろう。
一方で、小澤は自らのことを天才ではなく凡人だと語る。起業家としても成功しつつ、楽天の三木谷浩史ソフトバンク孫正義という名だたる経営者の右腕としても実績をあげてきた小澤のことを本当に凡人であると受け止める人はいないとしても、本書が凡人にとって学びにあふれていることは確かな事実だ。
本書は、小澤の成功の真髄を「おざーんの法則」という親しみやすく明快な18の原則にまとめている。そして、著者・北康利氏の手により、「おざーんの法則」がいかに小澤のキャリアにおいて成功の鍵を握っていたかがよくわかる構成になっている。
もし天才を「天からギフトを授かった唯一無二の存在」と定義するなら、再現性を武器として後進を一流起業家へと育て上げる小澤は、凡人であることの価値を証明する究極の起業家なのである。

本書の要点

・小澤は父の借金を返すためにIT起業を志し、CSK入社後に「ビズシーク」を創業して楽天に売却。楽天幹部として活躍し、楽天イーグルス設立を成功に導いた。
・楽天退社後は「投資ではなく消費、自分のやりたいことにカネを使おう」という方針で、エンジェル投資を通じて数多くの起業家を育成した小澤は、多くのIPOを実現するなど抜きん出た実績を残した。
・ヤフーでの小澤はEC改革を主導し、PayPayの普及を牽引。最終的にヤフーの社長を退任し、「友だちをつくろう」というモットーどおり、友人たちに囲まれて舞台を降りた。

現在は後進の育成にいっそう注力している。



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