1月20日から2月11日にかけて行われたパリ五輪男子サッカー競技の南米予選で、ブラジルがまさかの予選敗退に終わった。出だしこそ3連勝、5得点1失点と好調で、10チームを2組に分けた1回戦総当たりの1次リーグを、1節残して突破した。
最終節でアルゼンチンと対戦したブラジルは、そこで78分にゴール決められ、0-1の敗戦で予選敗退が決まった。南米代表は1位パラグアイ、2位アルゼンチンとなった。
予選開幕当初は好調だったが、長続きしなかった
「強いチームが作れる」と宣言したが…
ブラジルが力を入れるのはFIFAワールドカップだけで、五輪には興味がないかのように言われていたのは過去の話だ。A代表と兼任の監督が本番直前にしか準備ができない中で、急造チームの五輪代表を率いていた時代でも、近年の2008年北京での銅メダル(ドゥンガ監督)、2012年ロンドンでの銀メダル(マノ・メネーゼス監督)など、2位、3位には繰り返し達していた。しかし、W杯5度の優勝をはじめ、U-17、U-20のいずれのW杯でもタイトルを達成していたブラジルにとって、唯一足りなかった五輪金メダルは、サッカー大国の悲願だった。
そして、専属の監督とスタッフが各種国際大会や親善試合でチームを準備して五輪に臨むようになってからは、2016リオ五輪、2020東京五輪で連覇を果たしている。続くパリでは3連覇が期待されていたのだ。
当然のごとく、「屈辱」「失敗」と言った言葉とともに、感情的に批判する声も、戦犯探しをする向きもある。同時に、冷静な敗因分析を試みるコメンテーターやジャーナリストもいる。
FIFA国際マッチデーの開催ではないこの大会では、クラブが選手を代表に送り出す義務がないという問題がある。その中で、2022 年3月にU-20代表監督に就任して以来、この世代を率いてきたラモン・メネーゼスも、年代別代表総合コーディネーターを務めるブランコ(元ブラジル代表、94年W杯優勝メンバー)も、クラブを訪問するなど相当の根回しをしてきた。その上で、不可能と判断された選手以外の23人の招集メンバーを発表したものの、そのうち7人はクラブが辞退を決めた。
ロドリゴ(レアル・マドリー)、ガブリエル・マルティネッリ(アーセナル)、ビットー・ホッキ(バルセロナ)など、この世代でも常に呼べない選手は多かったとは言え、同様の条件の下で招集した昨年のU-20南米選手権では12年ぶりの優勝、U-23のパンアメリカーノ(北中南米のオリンピック)では36年ぶりの優勝を果たしている。
ラモンはそうした大会と同様、今回も「彼らは黄金世代。招集できなかった選手がいるとしても、私は今、ここに集まった選手たちを信頼している。このメンバーで強いチームを作れる」と宣言していた。
プロとしてすでに活躍している以上、クラブとの関係や、選手の休暇の確保についての問題もあるが、大会ごとに顔ぶれが変わらざるを得ない状況の中では、もう少し長い直前合宿の期間を取れなかったのか、ブラジルサッカー連盟の体制を疑問視するメディアからの声もあった。
ケガ人が相次ぎ不安定な戦いに
ラモンが試合後の会見でも語ったとおり、大会中の負傷も響いた。スタメンだったCB1人、SB1人、ボランチ1人と、守備の要が相次いで大会を離脱することになり、立て直しを迫られた。最終リーグでは1試合1失点ずつと、スコアとしては大きく崩れたわけではないが、安定と呼べる状態ではなく、拮抗した戦いではその1失点が大きく響いた。
攻撃では、今年半ばにRマドリーへ行くことが決まっているエンドリッキ(パルメイラス)や、昨年のコパ・リベルタドーレス決勝で決勝ゴールを決めたジョン・ケネジ(フルミネンセ)を始め、FW勢が大会を通じ、ゴールにアシストにと才能を発揮した。しかし守備の不安定さが影響し、中盤がスムーズに機能しない場面もある中で、序盤の絶好調ぶりを維持するのは難しかった。
大会中、エンドリッキがメディアに苦言を呈したことがある。DF2人が負傷離脱した直後の1次リーグ第4節ベネズエラ戦の後だ。
「あなたたち(メディア)はブラジルが本命だと言っていたけど、すべてのチームに五輪出場枠を獲得し、優勝するための同等の力がある。この敗戦は、僕らにとっても、そしてあなたたちにとっても一つの教訓になった。どのチームも決して軽視してはいけない、というね」
メディアの反発を招きそうな言葉だが、攻撃の主力として戦い続ける中で、ゴールやアシストが決まった時は称賛される個人技が、チームが苦戦や敗戦をした時はエゴだと批判される。そうした苛立ちもあったように見える。
大会中、メディアに苦言を呈したエンドリッキ(右)
一方、ジョン・ケネジは悔やんでいた。
「悲しい。でも、僕に言わせれば、それ以上に屈辱だ。ブラジル代表ほどのチームが五輪に出られないなんてことがあってはいけない。勝ちたいという気持ち、もっとゴールを決めるんだ、この重要な試合を決めるんだという気持ちが、僕らには少し足りなかったのかもしれない」
連盟は組織の大改革に着手
2023年にバスコダガマからチェルシーに移籍したMFアンドレイ・サントスは、チェルシーの方針により、積極的に年代別代表に送り出されてきた。
「今は気持ちを立て直し、何を間違えたのかを振り返り、前に歩み続けることだ。だけど、とても悲しいよ。僕らのチームはすごく強かったのに。五輪出場枠を獲得するためにすべての準備をし、頑張ってきたのに。そして、金メダルを獲得したいと、そこにすべてを注いでいたのに」
キャプテンを務めたアンドレイ・サントスは敗北の悲しみを吐露
ラモンは接戦となった最後のアルゼンチン戦について「我々は試合をコントロールしていたし、いくつかの最高のチャンスを作れた。でも、選手たちにも言っていたとおり、1つの細かいところで、1つのプレーで試合が決まる。それで、相手がゴールを決めるためのクロスを出すチャンスを与えてしまった」と振り返った。そして、大会についてはこう締めくくった。
「目標を達成できず、この大会をとても悲しい気持ちで去ることになった。
国内主要メディアの報道では、ブラジルサッカー連盟は大規模な組織改革の準備を進めていて、ここ1週間の間に、何らかの発表が行われるはずとのことだ。A代表にドリバウ・ジュニオール新監督が就任し、組織作りをしているのと合わせ、男子年代別代表人事にも着手する。ラモン監督の解任、U-17のフィリッピ・レアウ監督の辞任、またU-15代表ドゥドゥ監督の去就まで検討されている。さらに、これまでU-17とU-20のワールドカップ優勝、五輪金メダルを始め14のタイトルに導いたブランコも解任される可能性が高い。一つのサイクルが終わりと始まりを告げる。
コーディネーターのブランコ(左端)も解任される見込みだ
Photos: Joilson Marconne/CBF

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