【お笑い界 偉人・奇人・変人伝】#244
ツートライブ
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第3回「THE SECOND」で優勝を果たしたツートライブ。苦節18年目、ようやく全国ネットで花開いてくれました。
野性味あふれた目力の周平魂(写真(右))と、目パッチリのたかのり(同(左))の同級生コンビ。NSC時代からちょっと違う視点でネタを作っていたので、どう化けてくれるのかを楽しみにしていましたが、低空飛行が続きました。
今まで独自の世界に振り切ったネタをしたいけれど、お客さんがついてきてくれるか、わかってもらえるかを懸念してしまい、中途半端になって停滞していたのではないかと思います。私がNHKの「プロフェッショナル」に出演した際、たまたま周平魂から「新しい形のネタを書いたので見て欲しい」とメールで台本が届き、テレビの密着が入ることになりました。
「台本見たけど、こんなことしたいと思うてないやろ?」とストレートに聞くと、周平魂が「そうなんですよね。ホントはもっと行ききったことをしたいんですけど、お客さんがついてきてくれるかどうか、わかってもらえるかどうかわからないんですけど、先生どう思われます?」と言うので、「行ききれよ。好きなことしたらええねん」「いいんですか?」「やってみて(お客さんが)ついてきてくれへんかったら、そこでまた考えたらええやんか。やる前に悩むのやめてみ? 失敗しても納得いくやんか」「そうですよね、わかりました。行ききります!」と宣言したのです。
この時の熱量の高さに「本多正識のプロフェッショナル」に「講師と生徒の物語」が追加されることになりました。
あの時からずっと「花開いてくれ!」と強く思っていたので、優勝の瞬間は涙で画面が見えなくなりました。腐ることなく本当によく頑張ってくれたと思います。
彼らの持ち味は、漫才のテクニック的にはずばぬけたところがあるわけではないのですが、コツコツと努力を重ねる「職人」と言えばいいでしょうか。とっぴなことを思いつく才能はあるのに、形にする段階で悩みすぎて負のスパイラルにはまり込んでいた。そこから、やりたいことをやると決めてその道を突き進んだことが勝因だと思います。またこれまでは“相づち”に近かった、たかのりのツッコミが言葉選び、抑揚、タイミングと的確なものになってきたことも大きな進歩でした。
そして何より2人が自信を持って好き勝手なことを本当に生き生きと楽しそうにマイクの前でしゃべっていたことが、ネタの完成度としては高かった囲碁将棋を退けた大きな要因ではないでしょうか。
頑張ったから成功するとは限りませんが、人一倍頑張らないと絶対に成功しないのが漫才の世界。これまでため込んできたエネルギーを存分に解き放って、これからも「やりたい漫才」を全力で見せつけて欲しいと思います。おめでとうツートライブ! これから新たなスタートを切ってください!
(本多正識/漫才作家)