【春ドラマ「女優進出組」の実力大分析】#9
斉藤京子(元日向坂46)
「あやしいパートナー」(MBS・TBS系)
司法修習生・宮下さくら役
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今春のドラマ「あやしいパートナー」(MBS・TBS系/火曜深夜)でFANTASTICSの八木勇征とダブル主演しているのは、元日向坂46の斉藤京子。
韓国ドラマのリメークで、斉藤は弁護士志望の司法修習生を演じている。
1997年9月5日生まれ、東京都出身。2016年から24年4月まで日向坂46の1期生として活躍。女優としては、23年に「泥濘の食卓」(テレビ朝日系)で連ドラ初単独主演。今回は25年1月期の「いきなり婚」(日本テレビ系)に続く3度目の連ドラ主演となるが、放送局がすべて異なるところからも、旬の若手主演女優として求められていることがわかる。
今作で演じている主人公は相手役の弁護士を翻弄する破天荒女子だが、初主演の「泥濘の食卓」も純粋さゆえに暴走するという役柄で、等身大の役からちょっとズレた個性的な役を得意とする。
日向坂46の元メンバーでは影山優佳、加藤史帆、佐々木美玲、丹生明里らにインタビューしたことがあり、取材現場で斉藤京子の姿も見かけたが、その魅力を方程式で示すなら「個性的」×「心地よさ」だなと思った。
昭和歌謡が好きで、高校生のころから中森明菜のファンだったという斉藤京子は、歌番組で中森明菜のヒット曲「十戎」をカバーしたこともある。中森明菜も斉藤京子も低音ボイスなので、通じるものがあるのかもしれない。斉藤京子の落ち着いた雰囲気を中森明菜の楽曲にたとえると、林哲司作曲の「北ウイング」か。
趣味は昭和歌謡だが、彼女自身の魅力はレトロな感じではない。
現在の所属事務所である東宝芸能の先輩にあたる上白石姉妹でいうと、姉の萌音はクラシカルで牧歌的な役を得意とするのに対して、妹の萌歌はイマドキ感がある元気な役を演じる機会が多い。
斉藤京子もまた、存在感の中に新しさを秘めていて、書店の平台に並べられた最新刊の表紙のような新鮮さがある。
彼女が持つ「イマドキ感」は、ギャルのような尖った先端性ではなく、東京育ちということもあり、感性や感覚がアップデートされていて、「斉藤京子」という人間のOSが最新状態にある、という意味でのイマドキだ。
その「今っぽさ」が、親しみやすさにもつながって、同世代の共感を呼んでいる気がする。
彼女の演技を見ていると、2025年を感じる。リアルな「今」の肌触りだ。
(高倉文紀/女優・男優評論家)