MCのぐっさん(山口智充)もVTRを見ながら、「ああ~うまそうだなあ」とため息をつく。多くの食べ物・旅番組の中でも、「魚が食べたい!~地魚さがして3000港~」(BS朝日=水曜午後9時)は、本当においしそうで、魚の魅力にあふれている。


 日本と周辺海域には約4400種の魚類が生息しているが、東京・豊洲市場に入荷するのはそのうちの百数十種類。「なんともったいない!」と、魚好きのディレクターが津々浦々に出かけて、漁に同行し、地元でしか食べられない取れたての魚を味わい、紹介する番組だ。この5年間で230の漁港を訪れた。


 千葉・館山では、今が旬のマイワシの刺し身、てんぷら、つみれ汁。ひれの先のとげに毒があり、刺されると激痛に襲われるアイゴの刺し身、やはり毒を持つミノカサゴのポワレにも舌鼓を打つ。どちらも透き通るような白身で、地元漁師は「毒がある魚はうまいんだよ」と言う。なるほど、これは東京ではなかなか食べられない。


「タレントやお笑い芸人の食べもの番組は、『あま~い』『やわらか~い』とバカのひとつ覚えでヨイショするばかりだけど、この番組のリポーターはディレクターなので、『タイ独特の臭さがないですね』など、どうおいしいかを的確に伝えてくれる。逆に、おいしくない魚は『甘みはあるけど、うまみは薄い』とはっきり言うからね。ウソがないので、食べてみたいなあ、行ってみたいなあという気分にさせてくれる。魚好きにはたまらん番組ですよ」(東京・新橋の小料理店店主)


■予定調和や仕込みがない


 ロケは一つの港に3日程度滞在して、漁師・漁船に密着するが、海が荒れれば収録はできないし、1匹も揚がらず番組にならないことも多い。予定調和や仕込みがない演出も、この番組の好感度が高い理由だ。


 リポート担当のディレクターは10人ほどいて、そのディレクターが行くと必ず海がしけるシケD、逆に大漁をもたらす酒好きの勝利の女神D、さかな検定準1級Dなど、個性豊かなスタッフが顔出しで番組を支える。


 港によっては、タモリ、マルハゲ、ションベンタレ、スミヤキといった珍名の魚もいて、果たしてどんな格好をしているのか、食べられるのかと、科学番組のような興味も湧く。


「JF全漁連との全面コラボで作られていて、日本のお魚と漁業のPR番組ですが、配信でも再生人気は高いですよ」(テレビ情報誌編集デスク)


 静岡・舞阪漁港のモチガツオ、酢がらしで食べたい。


 (コラムニスト・海原かみな)


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