【今週グサッときた名言珍言】
「すぐ作れ、気持ちなんか!」
(古田新太/テレビ東京系「あちこちオードリー」8月20日放送)
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小池栄子は「劇団☆新感線」の看板役者である古田新太(59)と舞台で共演した際、驚いたことがあるという。舞台袖にはけたときに古田から「今日、あそこは、もう2間待ちな」と言われた。
そんな古田は「芝居が下手な人の特徴」を聞かれ、「(監督の)言うことを聞けない人」と即答する。そういう人は大抵「これ、カーテン開けてからがいいんすか? 閉めてからの方がいいんすか?」などと、言われてもいないことを確認したがる。「どっちでもいいんだよ、そんなの。言われてからやれ。言われる前に触るな、カーテンを」と断罪。さらにそういうタイプは「気持ちが……」などと言うことが多いという。
そんな役者に対し言い放った言葉を今週は取り上げたい。「言われたことをやって、やれたらすぐ帰れるんだよ、俺たちの仕事は!」というのが、古田の“役者論”だ。
言われたことをやるのが役者ならば、「断らない」のも古田の美学。「個性派」と称される古田の下にはさまざまな無理難題とも言えるようなオファーがやってくる。
「求められているならやりますよって話で、自分から個性派俳優を名乗ったことはないです。(略)『やれ』と言われたからやっているだけで思い入れもないです。役者って仕事は断っちゃいけないと思うんです。これを演ってくださいと言われたら『はい』と言える人が役者だと思うから、僕はこんな役がやりたいと言っているうちは駄目じゃないですか」(オリコン「ORICON NEWS」2019年4月20日)
そしてもうひとつの信念が“現場”を大切にすること。「始まっちゃったら一生懸命、監督のニーズに応える。あとは場が和めばいい」(同前)と、現場の人たちをいかに笑わせるかに腐心する。冒頭の番組でも「俺、ドラマとか映画とかも、音声さん笑かすことしか考えてない」と言っていた。そこには、目の前のお客さんを笑わせる「舞台俳優」としての誇りがあるに違いない。
「お客さんありきだから。お客さんが最後立ち上がってわーって拍手してくれたりとか、下ネタいってゲラゲラ笑うとか、寝ている客を起こせる距離っていうのが好きなんだよね」(「日刊スポーツ」22年1月6日)
(てれびのスキマ 戸部田誠/ライタ―)