女優でエッセイストでもある吉行和子さんが2日、肺炎のため亡くなっていたことを所属事務所テアトル・ド・ポッシュが8日、公式サイトで発表した。90歳だった。
「弊社所属の吉行和子が9月2日未明 肺炎のため 永眠いたしました 享年90 故人の遺志により 葬儀は近親者のみで執り行いました」として、「ここに謹んでお知らせ申し上げますとともに 吉行和子が生前受け賜りましたご厚誼に深く御礼申し上げます」と伝えた。
1935年8月9日生まれ、東京都出身。父は作家の吉行エイスケ、母はNHK連続テレビ小説「あぐり」(97年)のモデルにもなった美容師の吉行あぐり、兄は作家の吉行淳之介、妹は詩人の吉行理恵といったまさに文化人一家の生まれだった。
女子学院卒業後に劇団民藝に入所。57年に舞台「アンネの日記」の主演でデビュー。その後、数多くの映画・舞台・ドラマ・舞台で、存在感のある演技で長きにわたり活躍した。
映画では59年に毎日映画コンクール助演女優賞を受賞した「にあんちゃん」をはじめ、大島渚監督の「愛の亡霊」、「佐賀のがばいばあちゃん」、「おくりびと」、「東京家族」、「家族はつらいよ」など、多数の話題作に出演。舞台では、民藝退団後、唐十郎作・鈴木忠志演出の「少女仮面」に出演、一人芝居「MITSUKO」も13年間演じ続けた。ドラマでも、「3年B組金八先生」「ふぞろいの林檎たち」、「ナースのお仕事」、NHK朝ドラ「あぐり」「つばさ」「ごちそうさん」、大河ドラマ「国盗り物語」など、あらゆる作品に出演した。
誰もが、どんな役柄であれ、なんらかの作品の吉行和子さんの印象が心に残っているに違いない。まさに“国民的女優”だった。
吉行さんが、心優しい家庭科の池内先生を演じていた「3年B組金八先生」第2シリーズ(80年)で、ヒロインの優等生・迫田八重子役だった女優の川上麻衣子(59)は、日刊ゲンダイにこう語った。
「いつも自然体で優しくておだやかな方でした。金八先生の直後に、『母の殺意』という2時間ドラマで母と娘の役で共演させていただくことになり、その後、何度も母娘役を演じさせていただいたのですが、お会いするたびに楽しくお話ししていただいて、本当に母に会うような感じでした。とても柔らかくて、神秘的なところもあって大好きな女優さんでした。最後にお会いしたのはコロナ前で、京都の撮影所だったと思いますが、お元気そうにされていたので、本当に残念です。心よりご冥福をお祈りいたします」
来年2月公開の映画「金子文子 何が私をこうさせたか」が遺作に。吉行さんは83年、エッセー集「どこまで演れば気がすむの」を出版していたが、“どこまでも演り続けて欲しかった”と思う関係者や視聴者は後を絶たないようだ。
昭和の名女優がまた一人、旅立ってしまった。
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