【芸能界クロスロード】


 群馬県前橋市の小川晶市長(42)の不倫疑惑。芸能人では聞き慣れたワードも、女性市長が部下で家庭のある職員と密会していた場所がラブホテルとは……。


 衝撃的な話に情報番組は飛びつき連日、井戸端会議のようなノリで放送。ネットだけでなく、テレビの影響力もやはり大きい。


 公務時間外とはいえ10回近く相談に乗ってもらうためにラブホを利用したが、「男女の関係はありません」と小川氏は否定を続けている。アパホテルでの不倫が発覚し、仕事をなくしたアイドルもいるご時世。彼女の言葉を信じる者はまずいない。


 芸能界でも2020年、女優の鈴木杏樹が俳優とラブホ不倫が報じられたことがあった。鈴木は言い訳することなく即座に謝罪し反省。彼との別れも決意。ダメージを最小限に抑え仕事もさほど影響しなかった。元の明るさを取り戻し、最近はラジオのDJでも人気になっている。


 同じラブホ不倫も対応は正反対。これが男女の仲を立証する難しさである。


 芸能史をひもといてもさまざまな言い訳があった。彼の部屋で一夜を過ごした女優の弁明は「仕事の打ち合わせ」。女性の部屋に泊まり、部屋の電気が消えた時間まで報じても、「友達も一緒だった」と弁解したタレントもいた。逆に「好きな人に奥さんがいてもいいじゃないですか」と言い放った葉月里緒奈の発言は語り草になっている。


 総じて芸能界で不倫報道をすんなり認める人は少ない。ならばと、取材を強化したのが週刊文春だった。決定的な写真やラインの交換記録を掲載するなど、二の矢、三の矢で追及。否定していたタレントが嘘をついていたことを認め謝罪。すべての仕事を失ったこともあった。これを機に「文春砲」と呼ばれ恐れられたが、簡単に屈しない人もいた。議員時代の山尾志桜里氏は男性とホテルの部屋に入るところまで撮られても、毅然と不倫関係を否定した。


 昭和には的を射た対応をする人もいた。

俳優の三田村邦彦が女優と不倫疑惑を報じられた際、メディアの胸の内を察したように、「みなさんが本当に聞きたいのは、僕と彼女がエッチしたかどうかでしょう」と言った。「その通り!」と言わんばかりに報道陣は次の言葉を待った。「言わない」だったが、和やかな不倫対応になった。


 男と女が同じ部屋で過ごしても男女の関係と断定できないが、男女の関係を否定する証明もできない。


 その象徴が劇作家・梶原一騎氏の不倫疑惑を取材した際のやりとりである。


 梶原氏の部屋にある女優が何度となく泊まりに来ている事実に、梶原氏は事務所の応接室で堂々と対応。「彼女が俺の部屋に泊まったのは事実だが、それだけで男女の関係というのか! それ以上の決定的な証拠がない限り俺は認めん」と突っぱねた。確かに、それも事実。苦し紛れに「男女の仲でない、証拠もないわけでしょう」と反論。話し合いは平行線に終わり、事実だけを記事にした。


 不倫はさまざまな事情が絡み公になれば家庭内争議が勃発。芸能界でも夫の不倫発覚後、離婚した人もいた。


 仕事の影響も大きい。芸能人は一時的に謹慎。再び芸能界に戻ることができるが、市長は辞めても戻れる保証はない。くだんの山尾氏も先の参院選に立候補したが、「寝た子を起こす」ように不倫話が再熱。国民民主党の公認も外されあえなく落選した。小川氏の不倫問題、ひと波乱ありそうな気配が漂う。


(二田一比古/ジャーナリスト)


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