【お笑い界 偉人・奇人・変人伝】#262


 ばんばひろふみさん


  ◇  ◇  ◇


 初めてお会いしたのは20年以上も前。トミーズ雅くんの番組でした。

みなさん気になるのは大ヒット曲「『いちご白書』をもう一度」。雅くんが「ええ歌ですね。心にしみますもんね。あれはユーミン(松任谷由実)から提供されたんですか?」と聞くと「頼んだいうよりも頼みこんだんやね」。


 関西出身の“ばんばん”は上京したものの、なかなかヒット曲ができず「もう歌やめて(大阪へ)帰ろうと思ったけど、その前に他のミュージシャンとは異なる感性を持つユーミンに1曲作ってもらおういうことになったんですよ」。


「ユーミンとは親交があったんですね?」


「ないない。一回も会うたことないし、全然知らんかったんよ」


「そんなんでよう作ってくれましたね」


「ツテを探して探してユーミンの所へ行って、直談判ですよ。辞める前にユーミンがイメージする僕らの曲を1曲書いてください言うて。そら、あの時は頭さげ倒してたと思いますよ」



ユーミンへの感謝とリスペクトが言葉の端々に感じられた

 それから1週間ほどして(記憶では)できてきたのが、あの名曲。


「凄い! 俺らには絶対ない感性。頼みに行って良かったと心の底から思いましたよ」


「ばんばんに歌わすために作っといたみたいな曲ですもんね」


「そうでしょう? ユーミンてホンマに凄いよ!」


「本人が歌ってたらもっと売れたやろね」


「そら売れたやろね……コラッ!」とひとりノリツッコミ。その後のヒット曲「SACHIKO」も「あれもユーミンに頼んだん?」「なんとかもう一曲……てー、コラッ~! あれは俺が作ったんや!」と大爆笑。


 冗談を交えながらもユーミンへの感謝とリスペクトが言葉の端々に感じられました。恩人とはいえ同世代のミュージシャンの才能を素直にリスペクトされている姿に、ばんばんの人柄、人気のある理由を見た瞬間でした。


 数年後、ばんばんの番組に「NSCの伝説の講師」として呼んでいただきました。打ち合わせから私が気遣っていただいたのはもちろん、スタッフへの気遣いがちょっとした言葉遣いや優しいアイコンタクトにも表れて“ひとりじゃない、みんながいるから仕事ができているんだ”という、いつもNSCの生徒たちに言っていることを体感でき、とても心地よい時間をすごさせていただきました。


 70代の半ばを迎えられましたが、まだまだ「ばんばん節」を聴かせていただきたいと思います。


(本多正識/漫才作家)


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