鈴木憲和農相がブチ上げた「おこめ券」配布の詳細が、明らかになってきた。政府は13日、近くまとめる総合経済対策の原案を、自民党日本維新の会に示した。

物価高対策として、自治体が自由に使いみちを決められる「重点支援地方交付金」を拡充し、おこめ券などクーポンの発行を推奨することが盛り込まれた。


 おこめ券はJA全農や、コメ卸売の業界団体「全米販」などが発行している金券で、1枚につき440円分(税込み)の代金支払いに使用できる。コメ高騰が収まらない中、購入時の支援策を打ち出したわけだ。


 ただ、今回のおこめ券政策をめぐっては、批判も少なくない。発行・配布には印刷費や郵送費など余分なコストがかかるほか、家計への負担軽減効果は一時的に過ぎないとの指摘もある。


 そもそも、自民党は今夏の参院選で物価高対策として1人2万円の現金給付を掲げたが、支持が広がらず大敗を喫した。現金を金券に差し替えたバラマキ策に、野党からは「自民党はお得意のバラマキ政策を形を変えてやり続けるつもりだ」と冷ややかな声も聞こえてくる。


「備蓄米放出の効果がなくなり、2025年産米の集荷競争は極端に過熱。コメ業界が『異常事態』と口をそろえるほど、新米価格が高騰している。もはや、農水省はお手上げ状態に近く、おこめ券くらいしか即効性のある対応が取れないのでしょう。一時しのぎでも、手を打たざるを得ません」(農水省担当記者)



配布する線引きの難しさ

 他にも、事務手続きなどで自治体への負担が増す恐れもある。千葉県の熊谷俊人知事は8日に自身のXを更新し、「米価高騰は全国共通の課題で、対策は政府の責任です。

配布対象の線引きに批判が出る可能性がある、面倒な事務作業を地方に負わせるのはどうかと思います」と投稿した。


 そもそも、コメ価格の高止まりは、政府の需給予測の見誤りが要因のひとつ。コメ高騰対策の責任を、地方自治体に押し付けているとも言えるのだ。


「おこめ券の配布枚数の基準を世帯年収にするのか、子供の人数に応じたものにするのか。また、単身世帯にはコメを炊かない人もいる。配布対象などの線引きが難しいのに、制度設計を自治体に丸投げするのは無責任だ」(農水委員会所属の野党議員)


 農相の肝いり政策は、不発に終わる可能性も大いにありそうだ。


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