4年近くも戦時下のウクライナをめぐる和平合意が現実味を帯びてきた。「平和の構築者」を自任する米国のトランプ大統領がゼレンスキー大統領に対し、依然としてロシア寄りの和平案への数日以内の回答を要求。

クリスマスまでの停戦合意を実現するため、モーレツな圧力をかけている。いよいよ追い詰められたゼレンスキー大統領は、大統領選実施などを含めた修正案を一両日中に投げ返す構え。名ばかりの停戦が近づいている。


 米国がロシアとウクライナに示した和平案にはウクライナ東部の割譲が含まれる。修正が重ねられたものの、トランプ大統領が肩入れするプーチン大統領の主張に沿った内容のままだ。欧州各国と協議したゼレンスキー大統領は、領土割譲などウクライナに不利な項目を削除した修正案を米国に提示するとSNSに投稿。①20項目の条件②戦後のウクライナの「安全の保証」③ウクライナの復興──に関する3文書だという。


 その後、記者団に大統領選実施のための立法措置をとるとも表明。昨年予定された選挙は戒厳令下で先送りせざるを得なかったにもかかわらず、プーチン大統領やトランプ大統領に「非合法大統領」と批判されたため、最後のカードを切ったようだ。米欧による安全の保証が確約されれば「向こう60~90日以内にできる」という。


 筑波大名誉教授の中村逸郎氏(ロシア政治)はこう言う。


「ゼレンスキー氏は侵攻開始以降、最も苦境に立たされているといっていい。

大統領選実施はもろ刃の剣です。有権者の確定にあたり、前提となるのが選挙区。つまり、領土の範囲です。ゼレンスキー氏は、ロシアが2014年に併合したクリミア半島や22年に併合宣言した東部・南部4州もウクライナ領だと訴えてきた。しかし、クリミアを除いても領土の22%を軍事制圧されている。そうした地域で選挙実施は困難です。表立って割譲を容認することはできないものの、戦争を止めるためにギリギリの線を攻める戦略なのでしょう」


■高笑いプーチン12.19会見


 プーチン大統領は親ロ政権が倒れた直後にクリミア併合を強行した。親欧米のゼレンスキー大統領も狙い撃ちにされ、再選はおぼつかない。


「大統領選はオンライン投票となる可能性大。そうなればロシアの思うツボです。傀儡政権を樹立するため、どんな手を使ってでも介入する。プーチン氏は年末恒例のマラソン会見を19日に控えています。

その場で『特別軍事作戦』の休止と成果をアピールするため、一気に和平案を仕上げようとしている。ロシア正教のクリスマスにあたる1月7日までに具体的な内容を詰めるスケジュールで動いているのでしょう」(中村逸郎氏)


 権威主義者の高笑いが響き渡りそうな年の暮れだ。


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