集団的自衛権を行使できる「存立危機事態」を巡り、台湾有事も該当し得るとした高市首相の国会答弁。やっぱりあれは、高市首相の暴走だった。

事務方が用意した答弁原稿には記載されていなかったことが、立憲民主党辻元清美参院議員が12日までに受け取った質問主意書に対する政府の回答で分かったのだ。


 辻元議員は、あの高市答弁の原稿作成者について質問。これに政府は「内閣官房の作成」として答弁原稿の資料12枚を出してきた。そこには「台湾を巡る問題が、対話により平和的に解決されることを期待する」「その上で、一般論として申し上げれば、いかなる事態が存立危機事態に該当するかは、事態の個別具体的な状況に即して、政府が全ての情報を総合して判断する」などの記載はあるが、問題となった「どう考えても存立危機事態になり得るケース」との文言はどこにもない。


 むしろ答弁原稿には、「(台湾有事という仮定の質問にお答えすることは差し控えるが)」との記載があり、過去の政府答弁通り、一般論として曖昧にしようという意図すら見える。


 センシティブな問題だからだろう。あの高市答弁を引き出した立憲の岡田克也元幹事長は、国会質問にあたり、事前の官僚レクで丁寧に趣旨を伝えていた。それに対し、内閣官房は従来からの政府見解に沿った答弁を用意していたことが分かる。


 それにしても、いつもは野党議員からの質問主意書には玉虫色回答で逃げの一手の政府が、具体的な答弁原稿を開示したのはなぜか。


「ここまで問題が大きくなっている以上、高市首相が独断で答弁した事実を明確にして、知ってもらいたい、という官僚らの意図があるのでは」(野党関係者)


 辻元はこう話す。


「私の質問主意書に対してこういう答弁書が出てきたことは本当に異例で驚きました。やはりここから分かることは、高市首相の台湾有事発言は自説を述べたのであって、政府の見解を逸脱していることがはっきりした。

その結果、日中関係において経済的損失や軍事的緊張まで生み出してしまっていることは首相個人の責任が大きい」


 高市首相はタカ派の支持者向けに、あえて勇ましいことを言ったのか。首相本人の説明が必要だ。


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