【あの頃、テレビドラマは熱かった】#20


「ヴァンサンカン」
(1991年/フジテレビ


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 CNNが流す湾岸戦争のニュース映像も、ブラウン管で見るとTVゲームを見ているようだった1991年。バグダッドから8000キロ離れた東京の女子たちは、リカとカンチの物語に夢中だった。


 そして最終回に32.3%という記録的な視聴率を叩き出したCXの“月9”は、1つおいて夏クールにそれを上回る大ヒット作を出す。そのドラマのエンディングは、工事現場。花嫁衣装の浅野温子が武田鉄矢から現場に落ちていたナットを指輪代わりに……♪SAY YESで36.7%!


 それと同時期にCXの“木10”で放送されていたのが、「ヴァンサンカン・結婚」だ。ヴァンサンカンとは「25歳」のこと。90年の日本女性の平均初婚年齢が25.9歳で、当時の女性にとっては25歳は人生を決める大きな節目を意味していた。


 主演の安田成美(当時24)が、かつて愛した18歳年上の元上司(小林稔侍=当時50)と、前途有望な青年医師(石黒賢=当時25)との間を揺れまくるお話。見た目オッサンなのに「一緒に住むことは好きな女を失うことだ」なんてキザなセリフを真顔で言う小林稔侍がすごかった。


 どれだけ条件の揃った石黒賢に優しくされても、安田成美の頭からは“ネンジ師匠”のベッドテクが離れず……。


 脚本の大石静さんは「女は自分の体を開発した男から離れられないのか?」という昭和男の幻想みたいなテーマを、ねっとりかつ真正面から話に織り込んでいた。揺れる安田成美の“困り顔”に、視聴者は「そっち行っちゃダメ」と、今ならSNSで祭りになっていたかもしれない。


 さて、安田成美がすっかりナウシカのイメージから脱却したように、その親友役の菊池桃子(当時23)も“脱皮”していた。アイドル時代の可憐なイメージとは真逆のボディコン姿。

計算高く、いつも強気で言いたいことははっきり言う、男から見れば“コーマンチキ”な女、右子。これが女子たちには大ウケで、女性誌には彼女の言動を集めた“右子特集”が組まれたりもした。この数年前に謎のロックバンド「ラ・ムー」で失敗したかに見えた桃子のキャラ変は、これにて大成功。


「東京ラブストーリー」や「101回目のプロポーズ」をファンタジーとして楽しみながら、同時に「ヴァンサンカン」でリアルな25歳女子の生々しさに共感したり反発しながら自分を考える──そんな視聴の仕方が、当時の主流だったのかもしれない。日本中が恋愛ドラマに本気で向き合えた時代だった。そして確かに、フジテレビがその中心にあった。


(テレビコラムニスト・亀井徳明)


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