【2026新春「笑」芸人解体新書】#2


 エバース


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 いま若手漫才師の中で実力ナンバーワンと評されているのが、佐々木隆史と町田和樹のコンビ・エバースである。2024年に「NHK新人お笑い大賞」、25年に「ABCお笑いグランプリ」を制しており、その実力はすでに折り紙付きだ。


 昨年末の「M-1グランプリ」でも、エバースは順当に決勝へと進出した。優勝候補の筆頭と言われた彼らがファーストラウンドで披露したのは「ドライブデート」のネタ。ドライブデートをするために佐々木が町田に対して「車をやってほしい」と突拍子もない提案をする。町田は戸惑いながらも反論を重ねるが、次第に佐々木のペースに巻き込まれていく。


 町田に車になってほしいというのは、冷静に考えれば実現不可能に決まっているのだが、それを佐々木は感情や勢いではなく、理屈の積み重ねによって押し通そうとする。話の筋道は一貫しており、部分的にはもっともらしいことも言っているため、町田は「おかしい」と思いながらも否定しきれない。常識的な反論を重ねながら、少しずつ佐々木の論理にからめ捕られていく。


 その過程を丁寧に見せることで、町田の立場に感情移入していた観客は、いつの間にか一緒に理屈の迷路に入り込んでしまう。この漫才を見ていると、誰もが車になった町田の姿を頭の中にありありと思い浮かべることになる。見る者の想像力を刺激する上質な漫才だった。


 このネタでエバースは870点という高得点を獲得。審査員9人制の中では歴代最高点を叩き出し、ファーストラウンドをトップで通過して最終決戦へと駒を進めた。


 最終決戦で披露したのは「腹話術の人形」のネタである。ここでも佐々木が町田に「腹話術の人形をやってほしい」とむちゃな提案をして、そこから話が転がっていく。町田が実際に人形を演じる姿が妙に滑稽で、わかりやすい笑いも備えたネタだった。


 しかし、最終決戦では、エバースの前に登場したドンデコルテがより大きな笑いを取り、さらに後に出たたくろうが会場をうねるような爆笑で包み込んだ。結果としてエバースは優勝には届かなかった。


 それでも、彼らは実力派コンビとしての面白さを存分に見せつけ、多くの視聴者に強い印象を残した。漫才師としての評価が世間に広がっていくのはこれからだろう。


(ラリー遠田/お笑い評論家)


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