【お笑い界 偉人・奇人・変人伝】#273
新沼謙治さん
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1970年代に山口百恵さんや森昌子さんなど次々にスター歌手を誕生させた伝説の番組「スター誕生」で男性歌手としては最高の17社がスカウトの札を挙げたという新沼謙治さん。
お会いしたのは30代のころでしょうか? 画面で見る「純朴な好青年」というイメージ以上に朴訥としていながら、その場にいるだけで温かみを感じるすてきな方でした。
「なんにもしてないですよ。歌手になんかなる気もなかったし、僕なんかがなれるものとも思ってませんでしたから」と飄々と語りました。たまたま出場した町内のカラオケ大会で優勝し「働いていた左官屋の親方が『おまえ、スター誕生に出てみろ』の一言で予選に出場。1回目は落選し、悔しかったので再挑戦し、5回目で最終の7人に残ったそう。その間「カラオケの練習はしたけど、特別なレッスンは受けてないですよ。自分としては変わんないと思うんだけど、選曲が良かったのかな? どうして受かったんですかね?」とご本人が一番不思議がっておられました。
代表曲「嫁に来ないか」について「あれ歌うの嫌だったんですよ」という意外な答え。「結婚する気なんか全然なかったから、“ごめんなさい、そんな気はないんですよ”って歌うたびに謝ってました」と、なんとも素直な返答にスタジオは大爆笑。
当時は日本中から「お嫁にもらって」レターが届き、岩手の実家にも多い日には10人以上が押しかけてきてご家族が対応するのに大変だったそうです。それでも帰る電車がなくなるとお父さん(おばあちゃん?)が「よかったらうちに泊まってけ」と何人もの女性が一部屋で雑魚寝をしていたことがあったそうです。「だからあの曲は家族にもすごい迷惑かけたんですよ」と苦笑しながらも、楽しそうに話されている姿がなんとも素朴で人柄の良さを感じさせてくださいました。
趣味のレース鳩も、最初は鳩の入手法がわからず、境内や公園の鳩を捕まえていたそうで子供のように「今でも2羽はすぐ捕まえられますよ!」と自慢すると「そんな誰が使うん!」とツッコまれ、天然ぶりを発揮されていました。
大スター、売れている方にも数多くお会いしましたが、どんなことを聞かれても真剣に考え、スルーせずに答える姿に「いい人オーラ」があふれています。そんな人柄の良さが運を開き、周囲が助けてくれるのだと思います。新沼さんもとびっきりの“いい人”なので、思わず応援したくなるような不思議な感覚でした。苦節〇年、みたいな方がたくさんいる中で、こういうふうに自然体のままでスターになる方もいるんだなと驚きました。
現在も画面で見る姿が全然変わらず万年青年の新沼さん、これからもすてきな歌声を届けてください。
(本多正識/漫才作家)

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